世界陸上の思い出その2

世界陸上の思い出その2

今日は03パリ大会から。昨日97アテネ大会での面白ハプニングを紹介したんですが03年パリ大会では悪い方のハプニングが起こってしまいました。それがかの有名なドラモンド事件。

 

男子100二次予選でジョンドラモンドがフライングと判定されたのですがドラモンドは一貫として動いていないと主張。

 

 

実際VTRを観ても動いた様子は無く計測器のタイムだけでフライングと判定された状況。

 

ドラモンドは抗議してレーン上に寝ころがってしまいます。この行為に対して審判がレッドカードを出しコーチの説得もありドラモンドは競技場の外へ泣きながら向かいました。

 

 

確かにドラモンドの行為にも問題がありましたが彼自身この大会をメダルを狙える最後の大会と位置づけていたため悔しい気持ちはよくわかります。自分自身で本当に動いていないと思っていたのだから本当に気の毒でした。

 

そしてドラモンドが退場した後も会場はおさまらず大ブーイング。アトボルトンが静かにしてくれとお願いしても効果無し。結局競技が40分以上も遅れてしまいました。

 

このドラモンド事件は世界陸上の悪しき前例として人々に認知される事となってしまうのです。また女子100を制したケリーホワイトがドーピングで失格と悪い面も浮き彫りになった大会でした。

 

 

しかしそんな中、末續慎吾が200で日本人初の銅メダルを獲得!これは本当に凄かった!

 

ジョンカペル、ダービスパットン、ダレンキャンベル、JJジョンソン、バックランド、フランクフレデリクスというそうそうたるメンバーの中での銅メダル。取るとは思ってましたが本当に取ってしまうのが末続の凄いところですよね。

 

 

またご存知の通りこの二年後、ヘルシンキ大会で一番のヒロインとなるエレーナイシンバエワもこの大会が初の主要世界大会。当時から世界記録は出していましたがこの時は同じロシアのスベトラーナフェオファノアに敗れました。

 

しかし翌年のアテネではイシンバエワが大逆転を果たし金メダル&世界新記録更新。イシンバエワの時代はここから始まったのです。

 

05年ヘルシンキ大会

 

そして05年ヘルシンキ大会。この大会はなんといっても為末大の二大会ぶりの銅メダル獲得でしょう!これも本当に凄かった!しかもカーロンクレメントに勝っての銅!

 

四年前も取ってますが今大会は重みが違いました。フェリックスサンチェス、カーロンクレメント、ジェイムズカーター、バーションジャクションなどが相手だったので正直メダル取れるとは思って無かったです。

 

 

01エドモントンで銅を取ったが03パリ、04アテネでは惨敗。その結果を受けて私は正直為末はもう終わったと思いましたし為末本人もそう思った事があったかもしれません。しかし彼はあきらめなかった。そして夢を現実にしました。

 

亡き父にメダルをあげたいと挑んだその心意気。「骨が折れるくらいならいいや」と思って倒れこんだゴールの瞬間。「カーロンに競り勝てたのは日本人の魂のおかげ」というインタビュー。全てが侍でした。

 

 

そんな為末には雷雨という悪条件が味方したという面もありました。しかしこの悪天候が悪い方に出てしまった競技が男子棒高跳び。風に流されて失敗した選手の影響で支柱が折れて競技が一時中断するというハプニングがありました。

 

結局競技は再開されましたが「集中が削がれたしこの天候では競技を続けるのは危険だ。競技日程を延期すべき」と主張していた当時世界ランク二位、アメリカのトビースティーブンソンがその裁定を不服として棄権。

 

 

競技を続行した選手も嵐のため突風で全然距離を伸ばせませんでした。

 

しかしそんな中で優勝したのがオランダのラッキー男ブロム。普通はバーに触れて落ちたら失敗なのですがこの人はバーに触れたのに辛うじて落とさないという奇跡をなんと三回連続立て続けに起こして優勝をかっさらっていきました。

 

 

また男子棒高跳びでは波乱ばかりだったものの女子棒高跳びではコンディションにも恵まれてエレーナイシンバエワが世界記録を更新しました。

 

その他の競技では男子マラソンで尾形剛が銅メダルを獲得したり男子1500で優勝したラシドラムジが決勝レースのゴール後にそのまま走り続けて競技場を後にしたことで「インタビューゾーン無視男」なんて言われて騒がれたこともありましたね。

 

ちなみにインタビューゾーンを無視してトラックから走り去った理由は「トイレに行きたかった」だそうですw。

 

 

07年大阪大会

 

07年大阪大会は地元開催。この大会は非常にレベルの高い大会でした。例えば室伏広治は四年前のパリで銅メダルを獲った80m12という記録を超える80m46を投げたのにも関わらず六位。

 

また男子4×100リレーでは日本チームが38秒03というアジア新記録を出したのにも関わらず5位。ちなみにパリの優勝記録は38秒06、ヘルシンキの優勝記録は38秒08だったので過去二大会だったら金メダル相当の記録だったんですね。

 

 

また非常に大混戦となったのが女子100メートル。結果は

 

一位 ベロニカキャンベル 11,01
二位 ローリンウイリアムズ 11,01
三位 カーメリアジーター 11,02

 

という恐るべき大混戦。肉眼では確認不可能だった順位は実に0,002秒差でベロニカが金メダルを獲得しました。

 

世陸での大接戦というと93年シュトゥットガルト大会でのゲイルディバース対マリーンオッティの0,004秒差というのがありますが今大会はそれを上回る本当に歴史に残るレースとなりました。

 

 

この大会で最もインパクトを残した新星と言えば男子走り高跳びのドナルドトーマス。この人当時は高飛びを始めてまだ18ヶ月。元々はバスケの選手で練習中に遊びで飛んでみたらいきなり2mを超えてしまってそれで転向してみたというなんとも凄い選手ですw

 

技術もめちゃくちゃで解説から「足バタバタ」、「空中三段飛び」などと酷評されるほど。それでもステファンホルムなどの強豪に勝っての金メダルというのは末恐ろしい。ホルムも信じられないというような顔をしてましたけどw。本当に凄い逸材が現れました。

 

 

また大逆転が多かったのもこの大会の特徴。特に男子走り幅跳びは面白かった!一回目の試技でアメリカのドワイトフィリップスが大ジャンプ。

 

これを越える選手はなかなか現れずこのまま優勝は決まりかと思われました。しかし五回目でバハマのサラディノが逆転。さらに六回目の最終試技でイタリアのアンドリューハウが再逆転!

 

逆転につぐ逆転でついに勝負は決まりかと思われました。しかし最後の最後。最後の試技の最終跳躍者であるサラディノがさらにさらに再々逆転!ここにドラマが待っていました。91年東京大会のマイクパウエル対カールルイスを彷彿とさせるような名勝負でしたね。

 

女子砲丸投げも似たような展開。前回王者のオスタプチュクが投げた一本目を誰も越えることが出来ずついには最終投擲。このまま勝負は決まるかと思われました。

 

しかししかし!最後の最後でオーストラリアのバレリービリが大逆転!実況の言い方を真似るならだいぎゃくてーーーん!w。名前はビリだけど一位になりましたw。

 

という非常にハイレベルでエキサイティングな大会の中女子マラソンの土佐礼子が日本勢唯一のメダルを獲得して「地元開催なのにメダル無し」という屈辱からは救われました。

 

 

さあといったところで二日間に渡って過去六大会を振り返ってみました。次回大会はどのようなドラマが待っているのでしょうか。楽しみでなりません。

 

 

 

 

 

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