男子柔道 東京五輪振り返りとパリ五輪への展望
今回からは各競技ごとに東京オリンピックの振り返りと、パリオリンピックに向けた展望の記事を書いていきます。
まず初回は男子柔道の東京五輪の成績を振り返ります。
男子60kg級:高藤直寿 金メダル
男子66kg級:阿部一二三 金メダル
男子73kg級:大野将平 金メダル
男子81kg級:永瀬貴規 金メダル
男子90kg級:向翔一郎 3回戦敗退
男子100kg級:ウルフアロン 金メダル
男子100kg超級:原沢久喜 5位
金メダル5個という史上最高成績を残せました。
柔道が世界に広まっている今の時代で、7階級中5階級制覇というのは今後二度と起こらない奇跡的な成績だったかもしれません。
2012年のロンドン五輪で男子柔道は金メダル0というオリンピックで柔道が始まって以来初めての屈辱を味わうこととなりました。
そこから男子柔道の復権のために井上康生監督が就任し、2大会後にはこの成果。
本当に素晴らしい功績を残して頂きました。
3年後のパリ大会に向けては、おそらく就任が内定しているであろう鈴木桂治監督の下でこの成績をできる限り維持することが必要になります。
次のオリンピックが4年後にあるのと3年後にあるのとでは世代交代のサイクルが異なり、1年短いだけで相当シビアになるでしょう。
ここから各階級ごとにパリ五輪に向けた展望を書いていきますが、もう3年しかないと考えると大幅な世代交代を実現させるのは難しく、東京五輪を争ったメンバーをまずベースに考えるということになるはずです。
男子60kg級
今回金メダルを獲得した高藤直寿は3年後に31歳。
まだまだやれる年齢とはいえ、30歳を超える高藤に頼り切りというのは危うく、次の世代の台頭が望まれる階級になります。
高藤と最後まで代表を争った永山竜樹は3年後に29歳。
選手としてはかなり良い年齢だと思いますが、世界選手権では3度出場して銅メダル2個のみ。
グランドスラムやワールドマスターズでは多く優勝しており、世界ランキングも現在は高藤に次ぐ2位と実績は十分なのですが、大舞台に弱いことが気にかかります。
永山に求められることは、今後高藤に代表選考に勝ち、世界選手権で金メダルを取ること。
それができて初めて安心してパリ五輪は永山に任せようという柔道界の世論になるのだろうと思います。
そして永山よりも下の世代で伸びてきているのが古賀玄暉。先日亡くなった古賀稔彦さんの息子さんです。年齢は3年後に25歳。
2021年選抜体重別で優勝し、2021年世界選手権にも派遣されました。世界選手権では初戦敗退でしたが、まだまだ国際試合の実績を積むのはこれから。
今後は積極的にワールドツアーに派遣される立場になると思いますので、そこで実績を積み重ねていって欲しい。
パリの先のロサンゼルスまで狙える年齢ですので、パリまでに高藤や永山を脅かすような立場になれれば、日本の軽量級の未来は明るくなります。
男子66kg級
今回金メダルを獲得した阿部一二三は3年後に26歳。パリやロサンゼルスまで三連覇を狙える年齢です。
実力と年齢を考えてもこの階級はしばらく阿部一二三が軸になっていくことは間違いありません。
阿部一二三と代表を争った丸山城志郎は3年後に30歳。
パリ出場へ意欲を見せていますので、今後とも阿部一二三との争いは激しくなるでしょう。
しかし年齢的なアドバンテージは阿部一二三にあり、この階級は阿部一二三が主軸になると思われます。
男子73kg級
今回金メダルを獲得した大野将平は3年後に32歳。
オリンピック連覇を成し遂げた大野ですが、そろそろ世代交代が望まれる階級になります。
大野も今回は金メダルを獲得しましたが世界との実力差は5年前のリオ五輪の方が大きかった。
リオ五輪はずば抜けた実力で圧勝し金メダル。
対して東京五輪は5年前よりも世界との差は縮まったが、なんとかその差を守り切っての金メダルという印象です。
大野と代表を争った橋本壮市も3年後は32歳なので世代交代とはならず、さらに下の階級からの台頭が望まれるところ。
たとえば2019年のグランドスラム大阪で5位に入り2021年世界選手権の団体戦メンバーとして日本の優勝に貢献した原田健士は3年後に25歳。
2021年選抜体重別で準優勝した大吉賢も3年後に25歳。
2017年グランドスラム東京で優勝経験がある立川新は3年後に26歳。
この階級は団体戦での実施階級でもあるので、重点的に強化したい階級でもあります。
原田、大吉、立川のような若い世代を積極的にワールドツアーに派遣させ、次世代の台頭を待ちたいところです。
また、もし次の世代から有力選手がそれほど台頭してこなかった場合、丸山城志郎が阿部一二三との競合を避け、階級を上げて73kg級にチャレンジしてくる可能性なども無いとは言い切れないでしょう。
男子81kg級
今回金メダルを獲得した永瀬貴規は3年後に31歳。永瀬は2大会連続オリンピック出場ですが、この階級も世代交代が求められる階級になります。
国際大会の実績から観るとパリ五輪の有力候補として挙げられるのは佐々木健志と藤原崇太郎の二人。
佐々木健志は3年後に28歳といい時期を迎えます。
ワールドマスターズやグランドスラムの優勝経験もあり、2021年選抜体重別ではオール一本勝ちで優勝。今この階級で一番勢いに乗っている選手です。
藤原崇太郎は3年後に26歳。2018年世界選手権で銀メダルを獲得しています。
近年の勢いを考えるとパリ五輪の代表は本命が佐々木、対抗が藤原ではないかと私は考えます。
男子90kg級
今回悔しい思いをした向翔一郎は3年後に28歳とまだまだパリでリベンジすることは十分狙える存在です。
今回の悔しさをバネにして一層成長して頂くことを期待します。
ただこの階級は2021年5月のグランドスラムカザンを全試合一本勝ちで制した村尾三四郎に勢いがあります。
東京五輪が延期された際、柔道の代表は据え置かれましたが、もし再選考が実施されていたらオリンピックに出場できたのは向ではなく村尾だったかもしれません。
この階級のパリ五輪の代表は本命が村尾、対抗が向ではないかと私は考えます。
男子100kg級
今回金メダルを獲得したウルフアロンは3年後に28歳。3年後も充実した時期を迎えます。
ただ近年のウルフは減量苦に苦しむことも多く、東京五輪の団体戦での起用方法や本人のコメントを見る限り、100kg超級への転向も考えているところでしょう。
もしウルフが階級を変えるのであれば、この階級は飯田健太郎が有力になってきます。
飯田は3年後に26歳。2021年選抜体重別で優勝し、2021年世界選手権の代表にも選ばれています。
飯田も引き続きワールドツアーに積極的に派遣される立場になるはずですので、国際大会での経験を積んでいって欲しいですね。
男子100kg超級
今大会が2大会連続のオリンピック出場となった原沢久喜は3年後32歳なので世代交代が求められます。
この階級で今最も期待されているのは影浦心。
リネールの連勝記録をストップさせたり、2021年世界選手権では最重量級として18年ぶりに日本に金メダルをもたらしたりと何かと持っている選手です。
影浦は3年後に28歳と良い年齢になるので、これからは最重量級のエースとして世界の強豪を渡り合って欲しい。
下の世代では斉藤立に期待したいですね。オリンピック2連覇を成し遂げた斉藤仁さんの息子さんです。
まだ19歳ながら今年の2021年選抜体重別で3位に入りました。
パリよりはその先のロサンゼルスを目指す世代ではありますが、将来の日本の最重量級の未来を託したい選手です。
以上男子柔道の東京五輪の振り返りとパリ五輪に向けた展望をまとめました。
パリ五輪までの国際大会をきちんと追いつつ、これからも日本の柔道を応援していきたいと思います。
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