MGC男子レースの結果考察。なぜ設楽悠太と大迫傑は内定を取れなかったのか
東京五輪代表を決めるMGCが終了したので、まずは男子からレースを振り返っていく。
まずレースを動かしたのは設楽悠太。事前に前半から飛ばすと発言していた通り、スタート直後から一人ペースを上げた。
設楽悠太にとっては最初からペースを上げるにしても、ペースメーカーにされることは嫌だったはず。
そうされないためにはスパートタイミングが重要だが、今回はスタート直後、集団のペースが上がらないと判断するやすぐに出た。
判断としては秒単位の判断だった。スタートからいきなり飛ばすのでもなく、しばらく様子を見るでもない。
「自分以外にペースを上げる人はいない」と確信した瞬間にすぐに出た。
これがもう少し様子を見ていたら大迫傑は着いていっただろう。
そして設楽と大迫が出るなら他の選手も出たはずで、女子のようなハイペースの叩き合いになっていたかもしれない。
設楽悠太としては遅いペースからのラスト勝負だと分が悪いので、この日の独走作戦は成功と言っていい。
そう最初は成功していた。失敗した原因はその先にある。
いくらなんでも夏マラソンでキロ3分を切るペースでハーフを通過するのは速すぎる。
設楽としては一人抜け出すことができた時点で作戦成功と言って良かったのだから、その先はある程度スピードを緩めてもよかった。
具体的にはキロ3分で5kmまで行く。後ろの集団はキロ3分10秒〜15秒ペースだったから5km時点で1分ほどの差になっていたはず。
そこからはキロ3分5秒くらいに落としてよかったのではないか。そのペースなら最後までもったのではないかと思われる。
最初に出るという作戦は良かったのだが、その後のレース運びが残念だった。
ただ設楽の独走は後ろの集団のレース結果にも影響を及ぼすことになる。
設楽悠太の飛び出しに影響を受けた大迫傑
特に影響を受けたのが大迫傑。
大迫は本来集団の後方で力を溜めて、終盤にロングスパートをかけるというのが得意としている戦い方である。
しかし設楽が抜け出したことで、前を追わなければいけないという意識が頭の片隅に入ってきてしまったのだろう。
この日は集団の前目でレースを進めることが多かった。
そして山本憲二や鈴木健吾の仕掛けにも逐一反応しなければいけなかった。
そのような流れで足を使ってしまったのが終盤のスパート合戦で中村匠吾や服部勇馬に競り負けた遠因だろう。
設楽が飛び出さず、先頭集団の後方でずっと待機するレースをしていれば結果は変わっていたかもしれない。
今回内定を手にした中村匠吾や服部勇馬は有力選手ではあったが大迫ほど他選手からのマークはきつくなく、プレッシャーも少なかった。
そういった要因もあり、結果的に大迫よりも足を残していたことが勝因と言えるだろう。
特に中村匠吾のロングスパートは作戦勝ちと言ってもいい。
大学時代の駅伝でも駒澤の一区スペシャリストとして度々見せてきたスパートを思い起こさせた。
しかしこれに着こうとした大迫の意地も見事だった。
内定を取るという点を考えるなら中村匠吾に対して勝ちに行くのではなく、服部勇馬との勝負に専念する2位狙いの手もあっただろう。
あそこで中村を追いかけたのは日本記録保持者としての意地だったのかもしれない。
しかし無理に1位を狙いに行き、服部勇馬との勝負に徹しきれなかったのは敗因とも言える。
ファイナルチャレンジに向けて
代表の残り1枠はファイナルチャレンジを残すのみとなった。
直前考察で述べたように、男子は日本記録を狙うなら東京しかないと言ってもいい。
そして今回3位以内に入れなかった設楽悠太や井上大仁は狙ってくるだろう。
村山謙太もチャレンジするとツイッターで明言している。
現実的に日本記録を更新できる存在といったらやはり設楽悠太になるだろう。
あとは今回3位の大迫傑はどうするか。
個人的には出場して欲しいと思っている。
当日の条件に恵まれないと日本記録は難しいが、逆に条件に恵まれたら設楽悠太が日本記録を更新してくる可能性は十分に考えられる。
それならば大迫も出場し、直接打ち負かすべきではないだろうか。
2月に東京を走っても8月の五輪までは半年近く猶予はある。
それに日本記録を更新すればさらに1億円も貰える。プロランナーとしてチャレンジする価値は大いにあると私は考える。
来年東京マラソンでの大迫傑、設楽悠太、井上大仁らの本当の意味でのファイナルチャレンジを私は今から楽しみに待ちたいと思う。
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