内村航平 世界大会連覇の軌跡

内村航平 世界大会個人総合連覇の軌跡

体操界の絶対王者として長年君臨してきた内村航平。

 

その内村航平は東京五輪について「できないではなくどのようにできるかを考えて欲しい」と語り、多くのスポーツファンに勇気を与えてくれました。

 

そんな内村航平が体操界の頂点に君臨していた時代を改めて振り返ってみます。

 

 

2009年 世界体操ロンドン

 

内村航平が初めて世界の頂点に立ったのは北京五輪翌年の世界選手権でした。

 

北京五輪では19歳の若さで出場し、個人総合で銀メダルを獲得した内村航平。

 

楊威や冨田洋之といった世界の個人総合を牽引してきた選手達が北京五輪で第一線を退き、新しい時代の幕開けを感じさせる大会となりました。

 

内村航平はほぼノーミスの演技で91.500点の得点を出し、2位の地元イギリス、ダニエル・キーティングスに2.575点の大差をつける圧勝でした。

 

この大会の個人総合記録

 

1位:内村航平(日本) 91.500
2位:ダニエル・キーティングス(イギリス) 88.925
3位:ユーリ・リャザノフ(ロシア) 88.400

 

 

2010年 世界体操ロッテルダム

 

この年の内村も圧勝した前年をさらに1点近く上回る92.331点で圧勝。

 

全種目で15点以上を叩き出す安定感でまさに弱点のないオールラウンダーになりました。

 

2位のフィリップ・ボイとの差は2.283点。

 

日本人初の個人総合2連覇となりました。

 

この大会の個人総合記録

 

1位:内村航平(日本) 92.331
2位:フィリップ・ボイ(ドイツ) 90.048
3位:ジョナサン・ホートン(アメリカ) 89.864

 

 

2011年 世界体操東京

 

社会人となった内村は地元開催の世界体操東京で過去二回をさらに上回る圧巻の演技を見せます。

 

個人総合で全種目で3位以内の得点を記録し、国際大会自己ベストの93.641点をマーク。

 

2位のフィリップ・ボイに3.101点の大差をつける圧勝で、世界選手権史上初の個人総合3連覇を達成します。

 

同時に最も美しい演技をした選手に贈られるロンジン・エレガンス賞も獲得。

 

さらに種目別にも跳馬以外の5種目に出場します。

 

ゆかではG難度のリ・ジョンソンを成功させて金メダルを獲得。

 

内村のひねりが速く、審判がこれを見落として後に得点が訂正されるということも起きました。

 

この大会の個人総合記録

 

1位:内村航平(日本) 93.631
2位:フィリップ・ボイ(ドイツ) 90.048
3位:山室光史(日本) 90.255

 

 

2012年 ロンドンオリンピック

 

各国のメディアから個人総合金メダル確実と評され臨んだロンドン五輪。

 

しかし予選では鞍馬と鉄棒で落下し、団体決勝でも最後のあん馬の着地で失敗。個人総合も危ぶまれる事態となりました。

 

そんな中で迎えた個人総合決勝。

 

団体でミスをした鞍馬を15.066点で乗り切ると3種目目の跳馬で完璧な着地を見せ16.266点の高得点で首位に立ち、5種目目の鉄棒では予選で落下したコールマンを抜き難易度を落とす余裕の試合運び。

 

終わってみれば全6種目を全て15点台以上でまとめる安定した演技を取り戻して最終得点は2位に1.658点の大差をつける92.690点をマークして金メダルを獲得しました。

 

これで世界選手権と合わせて世界大会4連覇となります。

 

この大会の個人総合記録

 

1位:内村航平(日本) 92.690
2位:マゼル・ニューエン(ドイツ) 91.031
3位:ダネル・リーバ(アメリカ) 90.698

 

 

2013年 世界体操アントワープ

 

五輪の翌年の世界選手権でも衰えることなく安定した試合運びを見せます。

 

この大会でもでもただ一人全種目で15点台かつ3位以内を記録する安定した演技でトータル91.990点をマーク。

 

2位に入った加藤凌平に1.958点差をつけて個人総合4連覇、五輪と合わせた世界大会では5連覇となります。

 

また、この大会では種目別の平行棒でも金メダルを獲得しています。

 

この大会の個人総合記録

 

1位:内村航平(日本) 91.990
2位:加藤凌平(日本) 90.032
3位:ファビアン・ハンビューヘン(ドイツ) 89.332

 

 

2014年 世界体操南寧

 

この大会では団体で疑惑の判定により地元中国に逆転されて悲願の優勝を逃した日本。

 

その鬱憤を晴らすとばかりに個人総合では相変わらずの強さを見せます。

 

個人総合ではただひとり全種目で15点以上の演技(ゆか、跳馬で1位)を見せて91.965点を記録し、2位のマックス・ウィットロックに1.492点差をつけて世界選手権の連勝記録を5、世界大会連勝記録を6に伸ばします。

 

この個人総合での金メダル獲得で世界選手権での通算獲得金メダル数が7個目となり、監物永三と中山彰規が持っていた日本人選手最多記録に並びました。

 

この後、種目別鉄棒で銀メダルを獲得し、世界選手権の獲得メダル数は日本人歴代最多を更新する16個となりました。

 

この大会の個人総合記録

 

1位:内村航平(日本) 91.965
2位:マックス・ウィットロック(イギリス) 90.473
3位:田中佑典(日本) 90.449

 

 

2015年 世界体操グラスゴー

 

この大会ではまず団体で悲願であった金メダルを獲得します。

 

世界選手権の団体総合では37年ぶり、オリンピックも含めた世界大会では2004年アテネオリンピック以来となる日本の金メダル獲得に貢献します。

 

もちろん内村自身も初の団体金メダル獲得となりました。

 

個人総合でも、ゆかと跳馬で1位の得点をマークするなど全6種目で5位以内に入る安定した演技で92.332点をマーク。

 

2位のマンリケ・ラルドゥエト(キューバ)に1.634点の大差をつけて連覇を6に、世界大会の連勝を7に伸ばしました。

 

さらに種目別鉄棒でも自身初の金メダルを獲得。

 

この大会で3個の金メダルを獲得し、自身が持つ世界選手権での日本人選手最多メダル獲得数記録を金10、銀5、銅4の計19個に伸ばします。

 

また、オリンピックで獲得したメダル5個と併せた世界大会でのメダル獲得数も24個となり、監物永三と並び日本人選手歴代最多タイとなりました。

 

この大会の個人総合記録

 

1位:内村航平(日本) 92.332
2位:マンリケ・ラルデュエト(キューバ) 90.698
3位:デン・シュデイ(中国) 90.099

 

 

2016年 リオデジャネイロオリンピック

 

2009年に世界選手権を始めて制して以来、ライバルらしいライバルもおらず常に圧勝し続けていた内村航平。

 

しかし今大会では初めてといっていいライバルが現れます。

 

ウクライナのオレグ・ベルニャエフが完璧な演技を続け、内村も完璧な演技を続けますが5種目目終了時点で0.901点差で内村が遅れを取る展開。

 

残すは鉄棒1種目。1種目での逆転は難しい差でしたが内村は完璧な演技を披露します。

 

対してヴェルニャエフは最後の着地で1歩動きました。

 

その結果、ベルニャエフを0.099点差でかわし逆転で個人総合2連覇と団体との2冠を達成します。

 

着地1歩の減点は0.1点。まさに着地の1歩が勝負を分ける痺れる展開でした。

 

オリンピックの個人総合連覇は歴代4人目、日本人では加藤沢男以来44年ぶりの快挙。

 

世界大会での連勝は8まで伸ばしました。

 

この大会の個人総合記録

 

1位:内村航平(日本) 92.365
2位:オレグ・ベルニャエフ(ウクライナ) 92.266
3位:マックス・ウィットロック(イギリス) 90.641

 

 

リオ五輪以降

 

リオ五輪の翌年の2017年世界体操モントリオールでは、2種目目の跳馬の着地で負傷し途中棄権。

 

まさかの形で世界大会の連勝記録が8で止まります。

 

また、その他の国内外の大会を含めても2008年全日本学生選手権以来9年ぶりの敗北となり、個人総合の連勝記録は40でストップしました。

 

その後は怪我に悩まされ、2019年は日本選手権で予選落ちし、12年ぶりに日本代表の座を逃します。

 

しかしここで諦めないのが内村航平という選手の凄いところ。

 

2020年からは鉄棒に専念することを表明。日本選手権で、2017年の採点方法変更後世界最高となる15.700点を記録。

 

種目別鉄棒での東京五輪出場も見えてきました。

 

 

そんな中に訪れたコロナ禍、そして東京五輪の1年延期。

 

2020年11月の国際大会では「できないではなく、どうすればできるのかを考えて欲しい」と語りました。

 

新型コロナウイルスによって日本では諦めることが正当化されたように思います。

 

コロナだからできない、コロナだから仕方ない。コロナだから・・・を理由にすれば諦めても納得してもらえる。諦めることが正当化される。

 

そんな世の中で内村航平選手は諦めないことの大切さを教えてくれているような気がします。

 

 

今の内村航平はもうかつての絶対王者ではありません。

 

鉄棒1種目に絞って、それでも東京五輪の出場権を得られるかどうかもわからないという立場。

 

そんな状況でも諦めず東京五輪出場を目指し続けている。

 

「もし東京五輪が無くなったら・・・大袈裟に言ったら死ぬかもしれない」と語るほど東京五輪に賭けている。

 

もちろん「大袈裟に言ったら・・・」なので実際に内村選手が死ぬことはありません。

 

しかし自分が大切にしてきたものや生き甲斐にしてきたもの、全てを賭けて取り組んできた目標が無くなった時の絶望感や喪失感。

 

そのようなものを想像した時に、その感情の延長線上に死があると感じたのでしょう。「大袈裟に言うと」というのはそういう意味なのでしょう。

 

 

では裏を返せば。

 

人に希望を与えること。勇気を与えること。その行為を延長していくと人の命を救うことに繋がっていると思います。

 

ならば同じように大袈裟に言えば、私はこれまで何度内村航平選手に命を救われてきたか。

 

内村航平選手はどれだけ多くの人の命を救ってきたのか。

 

そのようなことも言えると思います。

 

 

だからこそ何としても東京五輪は実現させて欲しい。実現させたい。

 

その時、内村航平選手は間違いなくコロナ禍の中で多くの人に勇気や希望を与える演技を見せてくれるでしょう。

 

 

 

 

 

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