パリ五輪に向けた柔道ワールドツアーとワールドランキングの仕組み
オリンピックや世界選手権で優勝することは凄いことだということはイメージできるかと思いますが、マスターズやグランドスラムやグランプリの優勝がどれくらい凄いのか。どのような序列になっているのか。
それを理解していれば次のオリンピックへ向けた柔道界の動きがわかりやすくなるでしょう。
まず今の柔道界は世界ランキング制が2009年から導入されています。
このランキングを元に各大会の出場権やシードなどが決まってきます。
そしてランキングを上げるためには国際大会に出場してポイントを積み上げていく必要があります。
各国際大会に優勝することで得られるポイントは以下の通り
オリンピック・・・2200ポイント
世界選手権・・・2000ポイント
ワールドマスターズ・・・1800ポイント
グランドスラム・・・1000ポイント
グランプリ・・・700ポイント
大陸選手権・・・700ポイント
世界ジュニア・・・700ポイント
コンチネンタルオープン・・・100ポイント
上記は優勝ポイントなので、順位が下がるごとに獲得ポイントは減算されていきますが、観戦する上では優勝ポイントが高い大会ほど格が高い大会という認識で問題ありません。
ランキングに反映されるポイントは12か月以内で好成績を収めた上位5大会及びワールドマスターズか大陸選手権のどちらかで得たポイントの計6大会が100%加算。
13〜24か月(2年)以内に獲得したポイントは50%加算となります。
大会の開催頻度についてはオリンピックは4年に1回、世界選手権と世界ジュニアはオリンピック開催年を除く年に年1回、ワールドマスターズと大陸選手権は年1回。
グランドスラムは年間6回、グランプリは年間10回、コンチネンタルオープンは年間20回の開催となっています。
つまりオリンピックで上位を目指すような選手は世界選手権やワールドマスターズ、グランドスラム、グランプリでポイントを稼ぎ上位を狙う。
これから上位を狙う選手はまずはコンチネンタルオープンを回りポイントを稼ぎながらランキングを上げ、上位大会のグランプリ、グランドスラムなどを目指していくという流れになります。
これらの大会で獲得したポイントにより作成させる世界ランキングはとても大切です。
まずそもそも上位大会はランキングによって出場枠が与えられますので、ランキング上位に入っていなければオリンピックや世界選手権などの上位大会に出場するチャンスすら無くなります(大陸枠など一部例外はあり)。
そして各大会のシード順位もランキングによって決定されます。柔道のシードは基本的にどの大会でもランキング上位8名までに与えられ、トーナメントの組み合わせも予め以下のように決められます(準々決勝の組み合わせ)。
第1シード
第8シード
第4シード
第5シード
第2シード
第7シード
第3シード
第6シード
つまり世界ランキングで1位になりオリンピックで第1シードを取れれば、準々決勝では第8シードと当たり、準決勝では第4シードか第5シードと当たる組み合わせになるということです。
ライバルとなる世界ランク2位や3位の選手とは決勝まで当たらず、世界ランク2位と3位は準決勝で潰し合ってくれることになるので、非常に有利になるわけですね。
一方第8シードから漏れてしまうとシード外となります。
トーナメントの人数が不揃いならシード選手より1試合多くこなさなければいけませんし、初戦でいきなり第1シードの選手と当たってしまうこともあります。
今回の東京五輪を例に出すと、たとえばリネールはノーシードだったので他のシード選手より1試合多くこなさなければいけない組み合わせでした。
初戦で勝った後2回戦で第8シードのサッソンと当たり、その次が第1シードのバシャエフ。
結果的にリネールはここでバシャエフに敗れて三連覇を逃すことになるのですが、もしリネールがシード圏内に入っていた場合は展開は変わっていたかもしれません。
大野将平のように圧倒的な実力があったのでノーシードから優勝したり、永瀬貴規のようにノーシードで初戦からいきなりシード選手と当たる組み合わせになりながらも粘り強く戦って金メダルを取る例もあります。
しかし総じて言えば世界ランキングで上位に入り、オリンピックでいいシードを確保するというのが金メダルを取る近道になるでしょう。
ランキングポイントについては24ヶ月以内の大会から加算されることになるので、2024年パリ五輪のシード順位を取るための戦いは来年2022年夏から始まります。
さらに言えば、その2022年の世界選手権など重要な大会で良いシード順位を取るための戦いはもう始まっているとも言えます。
このような柔道界の仕組みを理解した上でワールドツアーを追えば、よりオリンピックに向けた各選手の歩みを興味深く追うことができるかと思います。
関連ページ
- 2021年世界柔道ツイートまとめ
- 古賀!初戦でいきなり負けるなよ!posted at 17:58:00永山はさすがですね。初戦でいきなり難敵のヌリヤエフだったけどしっかり勝った。世界柔道は日本は五輪選手出してないですけど他国は結構五輪メンバーを送っているので日本の2番手と世界の代表との差を測る機会です。順当なら永山はベスト4でキルギスバエフ、決勝でアブラゼと当たりますposted at 18:04:40
- 2019年世界柔道ツイートまとめ
- 本日開幕の世界柔道。男子60では永山が2回戦でいきなり強豪のキムウォンジンと当たってしまう。ここを超えたらベスト8でスメトフ、ベスト4はウロズボエフかムシュヴィドバゼだと思われる。かなり難しいブロックに入ってしまったposted at 10:36:37
- 2019年世界柔道振り返り8
- 世界柔道東京が閉幕した。今大会の振り返りや今後の東京五輪代表争いの展望などをまとめていきたい。今回は男女混合団体戦を振り返っていく。
- 2019年世界柔道振り返り7
- 世界柔道東京が閉幕した。今大会の振り返りや今後の東京五輪代表争いの展望などをまとめていきたい。今回は男子100kg超級、女子78kg超級を振り返っていく。
- 2019年世界柔道振り返り6
- 世界柔道東京が閉幕した。今大会の振り返りや今後の東京五輪代表争いの展望などをまとめていきたい。今回は男子100kg級、女子78kg級を振り返っていく。
- 2019年世界柔道振り返り5
- 世界柔道東京が閉幕した。今大会の振り返りや今後の東京五輪代表争いの展望などをまとめていきたい。今回は男子90kg級、女子70kg級を振り返っていく。
- 2019年世界柔道振り返り4
- 世界柔道東京が閉幕した。今大会の振り返りや今後の東京五輪代表争いの展望などをまとめていきたい。今回は男子81kg級、女子63kg級を振り返っていく。
- 2019年世界柔道振り返り3
- 世界柔道東京が閉幕した。今大会の振り返りや今後の東京五輪代表争いの展望などをまとめていきたい。今回は男子73kg級、女子57kg級を振り返っていく。
- 2019年世界柔道振り返り2
- 世界柔道東京が閉幕した。今大会の振り返りや今後の東京五輪代表争いの展望などをまとめていきたい。今回は男子66kg級、女子52kg級を振り返っていく。
- 2019年世界柔道振り返り1
- 世界柔道東京が閉幕した。今大会の振り返りや今後の東京五輪代表争いの展望などをまとめていきたい。まずは男子60kg級、女子48kg級から振り返っていく。
- 2019年世界柔道東京見所紹介と予想3
- 男子100kg級にはウルフアロンが登場。実力は誰しもが認めるが調子に波があり、前回大会もメダル無し。世界ランキングも八位と実績では優勝候補とは言い難い。しかし一番良い時のウルフアロンならば世界の頂点にも手が届くポテンシャルがある。
- 2019年世界柔道東京見所紹介と予想2
- 男子73kg級にはリオ五輪王者の大野将平が満を持して登場。代表選考レースでは長らく橋本壮市にリードを許していたが、ここ一年で急激に追い上げて代表の座を掴んだ。明確にリードするためには今大会何としても優勝したいところ。
- 2019年世界柔道東京見所紹介と予想1
- 初日の最軽量級。男子60kg級は高藤直寿と永山竜樹が出場する。東京五輪代表争いをリードしているのは高藤。この世界選手権で優勝すればさらに盤石のものになる。永山はここで優勝しなければ厳しい立場になるだろう。
- 2018年柔道グランドスラム大阪 -東京五輪代表選考レース-
- 東京五輪の代表選考に大きく関わってくる柔道グランドスラム大阪が終わりましたので、結果を見つつ現在の各階級の状況を見ていきます。
- 2018年世界柔道 結果雑感
- 男子60は高藤が頭一つ抜けだした。永山も強いしこの2人は実力的に世界の1位と2位だと思っている。東京五輪代表は高藤が85%、永山が15%くらいか。いずれが出ても東京五輪では金メダルを取りたい階級。女子48はビロディドという17歳の新星が現れた。彼女は谷亮子以来の絶対女王になるかもしれない。
- 2017年世界柔道ツイートまとめ
- 世界柔道初日は高藤、渡名喜が金メダル。出だし好調!posted at 01:02:198/29阿部一二三君めちゃめちゃ強いな・・・posted at 21:23:21阿部一二三君は4試合で一本2つに技有り5つ。キレキレposted at 21:58:45
- 2015年グランドスラム東京ツイートまとめ
- 柔道グランドスラム東京が終わって来年のリオ五輪代表が誰になるか見えてきたのでまとめようと思います。男子60は高藤が優勝でリオに大きく近付いた。今回3位で世界選手権も銅メダルだった志々目が追うが高藤との差は開いたposted at 23:04:48
- 2014年世界柔道ツイートまとめ
- さて今日から世界柔道開幕ですね。柔道はそれほど詳しくはないのですが、世界の有力選手だったり日本選手の現在の立ち位置であったりはわかってますし、世界ランキングや今年の大会結果と今大会のトーナメント表を照らし合わせればある程度予想はできますので、詳しくないなりに予想してみます。
- 2014年グランドスラム東京ツイートまとめ
- 柔道グランドスラム東京では高校二年生の阿部一二三君が世界柔道三連覇中の海老沼に勝っている!末恐ろしい若手が出てきましたposted at 00:26:04女子48は近藤と浅見の日本人決勝対決を近藤が制して優勝。浅見はロンドン五輪以前は無敵の強さでしたけど今は近藤の方がリオ五輪金メダルに近いですね。posted at 00:28:35