スノーボードハーフパイプの技の見方
北京五輪で最も注目を集めるであろう競技の一つであるスノーボード男子ハーフパイプ。
私のメダル予想の記事でも特に力を入れて解説しようと思っていますが、その前にスノーボードのハーフパイプを見る上で知っておくとより楽しめる知識をまとめてみたいと思います。
なおビッグエアやスロープスタイルのジャンプも基本的には同じ見方で応用が利きますので、是非北京五輪開幕前に覚えておいて頂けたらと思います。
まず例として1/15のスノーボードW杯第3戦で平野歩夢が優勝した時の構成を書いてみます。
フロントサイドダブルコーク1440
↓
キャブダブルコーク1440
↓
フロントサイドダブルコーク1260
↓
バックサイドダブルコーク1260
↓
フロントサイドダブルコーク1080
続いてW杯開幕戦で平野流佳が優勝した時の構成も書いてみます。
スイッチバックサイドダブルコーク1080
↓
バックサイドダブルコーク1260
↓
フロントサイドダブルコーク1080
↓
キャブダブルコーク1080
↓
フロントサイドダブルコーク1260
とこう書かれてもどのような技なのかよくわからないという方も多いのではないかと思います。
そういう方のためにこれを読めばスノーボードの技がわかりやすくなるという基礎知識になります。
まずスノーボードの立ち方(スタンス)には左足を前にして滑るレギュラースタンスと右足を前にして滑るグーフィースタンスの2種類があります。
これは単純に普段滑る時に左足が前なのか、右足が前なのかというだけの違いです。
そして通常のスタンスで滑ることをメインスタンス、通常と逆のスタンスで滑ることをスイッチスタンスと言います。
たとえば左足前のレギュラースタンスの選手が左足を前にして滑っている場合はメインスタンス。
右足前のグーフィースタンスの選手が左足を前にして滑っている場合はスイッチスタンスとなります。
次にジャンプ回転方向については2種類。
ジャンプした後、まずお腹が前を向く方向に回っていくことをフロントサイドスピン。
ジャンプした後、まず背中が前を向く方向に回っていくことをバックサイドスピンと言います。
つまりスタンスが2種類と回転方向が2種類、計4種類のジャンプがあり、それぞれ以下のような呼び方となっています。
フロントサイド(FS)・・・メインスタンスでフロントサイドスピン
バックサイド(BS)・・・メインスタンスでバックサイドスピン
キャブ(CAB)・・・スイッチスタンスでフロントサイドスピン
スイッチバックサイド(SWBS)・・・スイッチスタンスでバックサイドスピン
これで冒頭に示した平野歩夢や平野流佳のルーティンの前半部分の意味は理解できるようになったと思います。
なお選手によって得意不得意はあるものの、一般的にはメインスタンスよりスイッチスタンスの方が難しく、フロントサイドよりバックサイドの方が難しいと言われています。
つまり4種類の中ではフロントサイドが一番簡単でスイッチバックサイドが一番難しいということになります。
次にダブルコークやトリプルコークで使われる「コーク」という単語ですが、これは縦回転と横回転を組み合わせて斜め軸で回転することを意味します。
元々スノーボードは2006年トリノ五輪までは横回転の技が主流だったのですが、それに革命を起こしたのは2009年シーズンのショーンホワイトでした。
横回転に縦回転を織り交ぜて斜め軸で回転する新技を編み出し、斜め軸で回転する姿がコークスクリュー(コルク抜き)を連想させることから「コーク」と名付けられました。
その頭につくダブルとかトリプルというのは縦に何度回ったかという縦回転の回数です。
つまりダブルコークなら縦に2回転、トリプルコークなら縦に3回転していることを表します。
そしてその後の数字は横回転の回転数を示す角度です。
半回転は180度、1回転は360度ですので、1080なら3回転、1260なら3回転半、1440なら4回転ということになります。
以上のことがわかれば冒頭に示した技の意味がわかるようになります。
改めて()内で技の内容を解説しつつ、冒頭のルーティンを示してみると、平野歩夢の場合は
フロントサイドダブルコーク1440(メインスタンスでフロントサイドに縦2回転、横4回転する技)
↓
キャブダブルコーク1440(スイッチスタンスでフロントサイドに縦2回転、横4回転する技)
↓
フロントサイドダブルコーク1260(メインスタンスでフロントサイドに縦2回転、横3回転半する技)
↓
バックサイドダブルコーク1260(メインスタンスでバックサイドに縦2回転、横3回転半する技)
↓
フロントサイドダブルコーク1080(メインスタンスでフロントサイドに縦2回転、横3回転する技)
となり、平野流佳の場合は、
スイッチバックサイドダブルコーク1080(スイッチスタンスでバックサイドに縦2回転、横3回転する技)
↓
バックサイドダブルコーク1260(メインスタンスでバックサイドに縦2回転、横3回転半する技)
↓
フロントサイドダブルコーク1080(メインスタンスでフロントサイドに縦2回転、横3回転する技)
↓
キャブダブルコーク1080(スイッチスタンスでフロントサイドに縦2回転、横3回転する技)
↓
フロントサイドダブルコーク1260(メインスタンスでフロントサイドに縦2回転、横3回転半する技)
となります。
こうして見ると平野歩夢は1440という現在の最高回転数の技を連続で繋げている一方で、スイッチバックサイドができないのでジャンプの種類は3種類。
5つの技のうち最も簡単なフロントサイドの技が3つ組み込まれており技のバリエーションが少ないため、回転数の多いジャンプの連続技で勝負しているということがわかります。
一方で平野流佳は1440は無いものの、4種類の中で最高難度となるスイッチバックサイドから入り、4種類のジャンプを全てダブルコークで繰り出すというバリエーションで勝負しているということがわかります。
このような知識を持って選手の演技を見比べるとより深く楽しめるので、是非この記事を読んで理解して頂けたらと思います。
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