レスリングの五輪種目除外は本当に日本潰しなのか?

レスリングの五輪種目除外は本当に日本潰しなのか?

昨日のIOC総会でレスリングが五輪の中核種目から除外され、2020年五輪に実施されない可能性があるというニュースが日本スポーツ界を大きく動かしました。

 

この問題はスポーツファンの一人として大きな問題だと思っています。

 

 

レスリングは五輪の歴史や競技としての性質から考えても、陸上、競泳、体操、サッカーの次に欠かせない競技だと思いますし、近代五種やテコンドーやホッケーなどが残されてレスリングが除外される理由は絶対に無いはずだと思います。

 

テコンドーなんかは除外候補だったのに、韓国のロビー活動が功を奏して残ることができたという報道もありました。

 

 

しかし五輪で実施される競技を選ぶ上でそういう姿勢がそもそもおかしいはずです。

 

正当なロビー活動をしたのか、裏で賄賂などを渡した黒いロビー活動も含まれていたのかは定かではありませんが、そういった要素で実施競技を判断しているというのがそもそも大きな問題点です。

 

 

ロンドン五輪でもボクシングの審判買収や、体操競技などであった不明瞭な採点競技や、竹島プラカード問題の処分の軽さなど色々裏でありそうでした。

 

率直に言って今の五輪は黒すぎますし、このレスリングが除外候補というニュースは、今のスポーツ全体における大きな問題を内包しているニュースだと思っています。

 

 

日本潰しなど本当に存在するのか?

 

さて、この件は大問題であるということを前提にした上で苦言を呈したいのは、「また日本が強くなったから日本潰しが行われたのか」というような論調です。

 

ツイッターなどを見てても多くの人がこのようなことを呟いていましたし、ワイドショーのコメンテーターなども述べていました。

 

 

しかしこのような意見は荒唐無稽だと私は考えます。

 

 

まず、そもそも本当にスポーツ界に「日本潰しのルール改正」というものがあるのでしょうか?

 

 

このようなことが言われるようになったのは、私の認識ではスキージャンプがきっかけだったと思います。

 

長野五輪で日本勢が大活躍した後、スキー板の長さが身長+80センチから身長の146%になるというルール改正が行われました。

 

このルール改正以降、日本は五輪でメダルを取れなくなったことから、「身長が低い日本人に不利なルール改正だ。これは日本潰しじゃないのか」という論調が見られるようになったのです。

 

 

しかしこのルール改正で身長が低い選手が本当に勝てなくなったのでしょうか?

 

 

現実は異なります。

 

たとえばソルトレイク五輪とバンクーバー五輪で計4個の金メダルを獲得したシモン・アマンは、身長が172cmと日本の船木和喜や原田雅彦、葛西紀明といった選手達より身長は低いです。

 

また、2000年代初頭にW杯で総合三連覇を成し遂げ、バンクーバー五輪でも銀メダルを獲得したアダム・マリシュは170cmにも満たない身長です。

 

今男子ジャンプ界で一番強いグレゴア・シュリーレンツァウアーは180cm。長身ではありますが、原田や船木、葛西らとは5cm程度しか変わりません。

 

もちろん180cmを超えているトーマス・モルゲンシュテルンなど、長身で活躍している選手もいます。

 

しかしたとえばモルゲンシュテルンとシモンアマンやアダムマリシュの実績を比較しても、身長の差が成績を左右しているようには思えません。

 

結局は身長が低い選手が不利になるルール改正、というよりもルール改正に上手く対応できた選手は身長に関係なく勝てるし、対応できなかった選手は勝てなくなった。

 

それだけの話でしょう。日本勢は不運にも上手く対応することができなかった。

 

もし本当に身長が低い選手に勝たせないようなルールになったのであれば、シモンアマンやアダムマリシュの活躍は無かったはずです。

 

 

そしてそもそも日本勢を勝たせたくないのであれば、日本女子が強い女子ジャンプを五輪種目に採用する必要も無かったはずです。さらに言えば今の女子ジャンプで一番強い高梨沙羅ちゃんは低身長です。

 

これはレスリングについても同様で、もし日本のメダル数を減らすためにレスリングを外すなら、なぜ元々日本がぶっちぎりで強かった女子レスリングをアテネ五輪から正式に採用したのでしょうか。

 

要はルールが改正されるということはどの競技にもあり、対応できる場合もあれば対応できなかった場合もある。

 

単に対応できなかっただけのケースなのに、後付けでルール改正で勝てなくなった→日本潰しの改正だ、などと陰謀論が残ってしまうのでしょう。

 

 

オッカムの剃刀と悪魔の証明

 

こういったケースを論ずる場合、論理を組み立てる際に有用な二つのルールがあるので紹介します。

 

 

それは「オッカムの剃刀」と「悪魔の証明」です。

 

この二つのルールは覚えておくとビジネスなどで役立つシーンもあるでしょうし、日々生きていく上でも有用だと思いますので、是非覚えておくのをオススメします。

 

オッカムの剃刀とは「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでない」という考え方。

 

今回の件でいうとたとえば「レスリングが五輪から外される」という事柄を説明するために、「日本潰しである」という仮定を立てるならば、まず「日本スポーツ界が世界中から潰されなきゃいけないほどの影響力を持っており」、「レスリングという伝統競技を無くしてでも」、「日本のメダル数を減らす必要があった」、「さらに柔道や体操ではなくレスリングでなければならない理由があり」、「IOCの投票委員の多数はそれに同意した」。

 

と多くの仮説を立てる必要があります。

 

 

それよりも

 

「レスリングはロビー活動を行わなかったからロビー活動を行った他の競技に負けた」という仮説一つだけで成り立つ考えの方が優秀であるわけです。

 

全ての事柄に当てはまるわけではありませんが、大抵の陰謀論はオッカムの剃刀でシャットアウトできるので、騙されやすい方は是非この考え方を覚えておいてほしいです。

 

 

そして「悪魔の証明」とは「悪魔が存在すると主張する者は存在する証拠を出さない限り存在しないとみなされる」というルールです。

 

これは「存在しない」という証拠を提示するのは、「存在する」という証拠を提示するよりはるかに難しいことから、ある事柄において存在するか存在しないかの論争がある場合、「存在する」と主張する側に証拠提示義務があり、証拠を提示できない限りは「存在しない」とみなされるのです。

 

 

たとえば「宇宙人は存在するか」という論争を考えてみます。「存在する」と主張する側はどこか一つの星でもいいから見つければ証拠を出せます。

 

それに対し、「存在しない」と主張する側が証拠を出すには、宇宙にある全ての星を隅々までくまなく探して、どこにも見つからなかったという場合でしか証拠を出すことができません。

 

こちらの方が格段に難しいわけです。

 

 

日本潰しの証拠などはない

 

つまり「レスリング除外は日本潰しである」と主張する側は、その証拠を出さない限り否定されるとみなされるので、そもそも証拠もなしにそんなことを主張すべきではないのです。

 

ルールが変わったり競技の入れ替えがあるたびに、日本潰しだなんだとかいうのはただの被害妄想にしか思えないですし、スポーツファンとしては恥ずかしいからやめてほしいと思います。

 

ルールが変わってもそれに対応して、しっかり結果を残している日本人選手もたくさんいるのですから。

 

 

と日本潰しうんぬんの意見は否定した上で再度言わせて頂くと、レスリング除外という決定はあまりにもおかしいですし到底納得できるものではありません。

 

このまま何らかの政治的な意図により外されてしまうならば、「正々堂々」というスポーツの根幹にかかわるほど大きな問題になると考えているので、復活してくれることを切に願います。

 

 

こんな時こそ読んでみて欲しい一冊。

 

 

 

 

 

 

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