ロンドン五輪四日目の考察(柔道、競泳、卓球、女子サッカーなど)

ロンドン五輪四日目の考察(柔道、競泳、卓球、女子サッカーなど)

柔道女子では上野順恵が銅メダル。なんとか銅メダルは確保できましたが世界ランク一位の上野が世界ランク10位以下の選手に攻めることもできず消極的なまま負けて敗者復活戦にまわってしまったというところがすっきりしないですね。

 

ただ一番悔しいのは本人なはずです。2009年の世界選手権では全試合圧倒的な力で一本勝ちして優勝。翌年の2010年でも連覇して2年前は完全に敵無しの上野でした。

 

 

しかし陰りが見え始めたのは昨年2011年の世界選手権。強かった時の柔道が嘘のように苦し紛れの柔道でなんとか決勝まで勝ちあがるもエマヌに何もさせて貰えずに惨敗。

 

年々衰えていく自分の力と日に日に迫ってくる五輪。不安は大きかったでしょう。そしてその不安がさらに柔道を消極的なものにさせてしまう。

 

 

彼女にとって不運だったのは、ただ自分の全盛期が五輪と五輪の間の年にきてしまったということだけ。

 

もちろん五輪の年にベストパフォーマンスを出せるように四年計画で徐々に調子をあげていくべきではあるのですが、それでも彼女の気持ちを思うと昨日の消極的な柔道を攻める気にはなれないです。

 

指導二つでなんとか勝ち取った銅メダルは彼女の最後の意地だったのでしょう。

 

 

男子の中井貴裕も三位決定戦で敗れてメダル無し。積極的な攻めの姿勢は良かったですが残念ながら返されて負けてしまいました。

 

中井は世界ランク五位で世界選手権優勝経験も無いので厳しいかと思っていましたが、やはり立ち技で一本を取りにいけない選手は安定して勝つことは難しい。

 

立ち技、寝技、そしてポイントで手堅く勝つ柔道。この全てができる柔道家でないと世界で安定してトップに立つことは難しいのでしょう。

 

 

競泳で松田が銅メダル

 

競泳では男子200mでバタフライで松田丈志が銅メダル。フェルプスの調子があまり良くないので勝って金メダルを取る最大のチャンスだと思いましたが、チャドレクロスという伏兵が潜んでいました。

 

金メダル取らせてあげたかったので残念ですが、松田は今期自己ベストだった1分54秒01を大きく上回る1分53秒21を決勝で出してきたのでベストの泳ぎはできたのでしょう。ただ52秒台を出せたレクロスが強かったと褒めるしかない。

 

また、女子200mバタフライ準決勝では星奈津美が3位で予選通過。男子200m平泳ぎでは北島康介と立石諒が揃って決勝進出を決めました。

 

 

女子卓球シングルスでは石川佳純が日本勢として初めてシングルスでベスト4に残るものの、中国の選手に敗退。やはり中国の壁は厚かった。しかし明日の三位決定戦でまだメダル獲得のチャンスがあります。

 

相手はシンガポールの選手で実力的にはほぼ互角。日本卓球界初の五輪メダルを目指して頑張って欲しい。

 

 

女子サッカーは南アフリカ相手に引き分け。勝つことよりも負けないことを優先していた戦いでしたね。すでに予選リーグ突破を決めていて引き分けなら2位以上も決まる。

 

この試合のミッションはターンオーバーで選手を休ませつつ負けないこと。完璧にクリアしたので問題無いです。

 

 

決勝トーナメント初戦の相手はブラジル。キリンカップでは4−1で勝っていますが、あの時はブラジルのエースであるマルタが不在でした。とても強い相手ですが勝ってベスト4に進んで欲しい。

 

ベスト4で当たるのはフランス対スウェーデン戦の勝者。そして決勝はおそらくアメリカでしょう。

 

 

その他の種目ではカヌーのスラローム男子カナディアンシングルで羽根田卓也が7位入賞。テニスの男子シングルスでは錦織圭が3回戦進出。

 

体操女子団体はミスが相次ぎ決勝は8位。バドミントン女子シングルスの佐藤冴香、バドミントン女子ダブルスの藤井瑞希・垣岩令佳ペアは決勝進出を決めました。

 

 

本日の見所

 

さて本日の見所です。

 

柔道は男子が西山将士、女子は田知本遥が登場。

 

 

西山は出場選手の中で世界ランク二位。決勝まで進む力は十分にある。ただしこの階級には絶対王者のイリアディスがいます。

 

イリアディスがいつもの強さを発揮すれば間違いなく決勝で西山と金メダルを賭けて戦うことになる。そしてやはり有利なのはイリアディスでしょう。

 

 

しかし西山大希、小野卓志らとの熾烈な国内選考の中でなぜ西山将が選ばれたのか。それは持ち前の粘りの柔道でイリアディスに勝ったことがある経験を買われたから。

 

今大会の柔道は本命がなかなか勝てません。この本命が敗れる流れがイリアディスをも流し去れば西山にもチャンスが出てくる。男子金メダルゼロ脱出に向けて踏ん張りどころとなります。

 

 

田知本は世界ランク3位。ベスト4で当たる世界ランク2位のボッシュがまずメダル獲得に向けての難敵となります。

 

そしてここを乗り越えると世界選手権二連覇中の女王デコスが決勝で待ち構えているでしょう。田知本は実力的にはこの階級三番手というのが正直なところ。

 

しかし田知本は過去にボッシュにもデコスにも勝っている。金メダルのチャンスは十分あると思います。

 

 

今大会の柔道は松本薫以外世界ランク最上位の選手が金メダルを取れていません。それだけ本命が勝てない波乱の大会となっています。

 

また勝ちあがる途中にシード選手が負けるケースも多いです。それだけ各選手の実力が接近しているということなのでしょう。

 

もう日本の柔道陣に世界ランク一位の本命選手は残っていません。しかし必ずチャンスはあるはず。金メダル一つのみで終わらないよう意地を見せて欲しい。

 

 

体操では男子個人総合決勝で内村航平が金メダルを目指します。内村は団体決勝であん馬の最後にミスが出た中でも92点という高得点を記録。この得点は内村以外誰も出すことができない点数です。

 

つまりミスが一つあっても内村の優位は動かない。内村に二つ以上ミスが出て初めて他の選手にチャンスが出てくるという状況です。

 

 

明日は団体決勝でミスが出たあん馬からスタート。最初のあん馬でミス無く乗り切れば金メダルはかなり濃厚になると言っていいと思います。最初の種目に注目してください。

 

また田中和仁も個人総合に出場。ベストの演技をすれば内村と揃ってメダルを獲得する力はあるので頑張って欲しい。

 

 

競泳では北島と星が金メダルを目指して泳ぎます。

 

星は予選3位通過。予選から準決勝にかけて2秒近くタイムを上げてきているので決勝もさらにタイムを上げてくれることでしょう。

 

ライバルは準決勝で星に先着した中国のジョリュウアン、そして準決勝で唯一2分5秒台を出して一位通過したアメリカのハーシー。三人での金メダル争いになります。

 

優勝タイムは2分4秒台になるでしょう。星は4月の日本選手権で2分4秒69を出しています。決勝でこのタイムを出せれば金メダル取れるでしょう。3ヶ月前の自分を越えることができるか。それが金メダルの鍵となります。

 

 

男子200m平泳ぎの北島と立石の金メダルは正直厳しいか。ダニエルギュルタとイギリス勢二人が2分8秒台前半を出したのに対して、北島と立石は共に9秒台。

 

北島には競泳史上初の三連覇がかかっていますが、後半100mでちょっと疲れた感じだったのが気にかかる。疲れに関してはもう調整でなんとかなる問題ではないですからね。

 

 

ギュルタやイギリス勢は7秒台出してきそうな気がするけど北島、立石が7秒台を出せそうな気は正直ちょっとしない。北島の今期ベストは2分8秒ジャスト。

 

このベストの泳ぎができて初めてメダルのチャンスが出てくる。かなり厳しい戦いになりそうですがなんとか王者のプライドを持って力を出し切って欲しいです。

 

 

また男子200m背泳ぎで入江陵介、女子200m平泳ぎで鈴木聡美と渡部香生子、男子200m個人メドレーで萩野公介と高桑健が決勝を目指して予選と準決勝を泳ぎます。

 

特に入江は金メダル候補なのでライバルのロクテにプレッシャーを与えるような泳ぎで準決勝を越えたい。最低でも1分54秒前半を出して決勝に進みたいところです。

 

 

男子サッカーは予選最終戦のホンジュラス戦。まだ確定ではないですがおそらくブラジルが一位通過するでしょうから、日本は決勝T初戦でブラジルと当たらないために一位通過が必要になります。

 

一位通過のためには引き分け以上が必要です。かつ決勝Tに備えて選手を休ませたい。つまり今日のなでしこと同じようなミッションになります。

 

 

ここをしっかり引き分け以上で乗り越えてくれればベスト4が大きく見えてきます。逆に負けてしまい二位となってブラジルと当たるというのは、ただでさえ実力で不利なのに負けた流れを引きずってしまう可能性があるので非常に厳しくなるでしょう。

 

なんとかきっちり一位で通過してメダルを近づけて欲しい。

 

 

卓球では女子シングルス3位決定戦で石川が登場。日本卓球界初のメダル獲得は果たしてなるでしょうか。

 

柔道、体操、競泳とメダル有望種目がたくさんありますのでメダルラッシュに期待したいですね。

 

 

 

 

 

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