ロンドン五輪七日目の考察(柔道、アーチェリー、トランポリン、女子サッカー、競泳、陸上)
メダル無しが危惧された大会七日目ですが、見事二つの銀メダルを獲得してくれました。
柔道女子では杉本美香が銀メダルを獲得。絶対的な優勝候補だったトウブンが準決勝で敗れたのでチャンスでしたが、そのトウブンを倒して波に乗ったのかオルティスに敗れてしまいましたね。
指導一つ差での旗判定負け。実力伯仲という感じだったので勝負は時の運といったところか。しかし決勝の前に今までの試合で見せなかった笑顔を見せていたところがちょっと気になりました。
初戦から準決勝くらいまでは金メダルを獲得した松本のようなまさに鬼神という雰囲気でこれは勝ち上がれるなという気迫を感じたんですよね。
それが決勝前の笑顔に違和感を感じてしまった。意図的に笑顔を作っていたので笑って緊張感を和らげようという考えがあったのでしょう。
しかしそれが逆にガムシャラに勝ちに行く姿勢を失ってしまって指導を受けることに繋がってしまったのかなと。
たらればを言っても仕方ありませんが、もし杉本が松本のように最後まで緊張感を緩めずに気迫を前面に出して戦えていれば結果は変わっていたかもしれません。
やはり金メダルを取れる選手と取れない選手のわずかな差はそのあたりにあるのかなとも感じました。
男子柔道初の金メダルゼロ
男子では上川大樹が二回戦敗退で男子柔道史上初めての金メダルゼロに終わりました。上川はまあ実力相応の結果だと思いますが、男子の金ゼロというのは平岡拓晃、海老沼匡、中矢力で取れなかった時点で厳しかったですね。
柔道は今日の杉本も含めて、決勝で3人負けているというのも痛かった。結局柔道は金1に終わる惨敗と言ってもいいような結果でしたが、もし決勝で全員勝てていれば金4とそこそこの成績で終われることもできた。
もちろん飛びぬけた力が無い限り五輪の決勝というトップ選手同士の戦いは実力伯仲で翌日やったら結果が変わるようなものかもしれない。
また初日に優勝候補本命と言われていた福見友子が敗れたことも、翌日以降の選手の精神面に影響を与えたかもしれない。だから今までに比べて完全に弱くなったと一言で言い切ることはできないかもしれません。
しかし裏を返せば飛び抜けた力を持つ選手がいなかったということが言えます。全盛期の谷亮子や野村忠宏、谷本歩実や井上校正や鈴木桂治など負ける気がしないくらいの強さを持った選手は今回は松本薫くらいしかいなかった。
立ち技で一本を取ることも寝技で一本を取ることもでき、さらにポイント狙いで手堅く勝つ柔道もできる。どんな状況でも対応できる選手じゃないと飛びぬけた力で確実に金メダルを取ることはできないのでしょう。
海老沼は立ち技は切れたが防御や寝技に難があった。中矢は寝技やポイントを取る柔道はできたが、立ち技で一本を取る力が無かったから逆転できなかった。
結局金メダルが1つのみだったのは、全てが世界トップレベルにあった選手が松本以外にいなかったということなのでしょう。
現在の柔道界のトップレベルは本当に混戦で力の差がありません。世界ランク一位が実力通りに金メダルを獲得できたのは松本、デコス、テディリネールの三人だけ。
福見友子、中村美里、ソビロフ、イリアディス、トウブンなど圧倒的な優勝候補と言われた人達もかなり金メダルを逃しています。
それほど混戦な柔道界では全ての能力が高いレベルの選手を揃えないと「運が良ければ金が取れるし運が悪ければメダルも取れない」という状況で止まってしまう。
この混戦な柔道界で一歩抜け出せる力を持つ選手をどう育てるか。金を取った選手と取れなかった選手の差はなんだったのか。そのあたりをしっかり敗因分析して、四年後のリオ五輪ではお家芸復活を見せて欲しいと思います。
男子アーチェリーで古川が銀メダル
男子個人アーチェリーでは古川高晴が銀メダルを獲得!決勝は負けてしまいましたが見事な銀メダルでした。
女子団体でメダルを取った時にも書きましたが、日本はこのような身体能力が不利にならない種目を積極的に国が強化していくべきだと思うのです。
今はアーチェリーは特に国のサポートも無い中で好きな人だけが取り組んで、その中から強い選手が出場するというような状況です。これでは国が全面的にサポート、強化を行っている韓国や中国に勝つのはなかなか難しい。
そもそも特に国のサポートがなくても個人でメダルを取れるというのは日本人の資質に合っているということです。アテネの時も40代の学校の先生が銀メダルを獲得しているわけです。
ただでさえ資質があるのに加え、国がしっかりとしたサポート、強化を行えばメダルラッシュできるはずです。現に韓国はそのような方法でアーチェリーで金メダルを3つ取っている。
日本は韓国からアーチェリーのメダルを全て奪うくらいの気持ちで強化していって欲しいなと思います。
トランポリンは二人入賞
男子トランポリンでは伊藤正樹が4位、上山容弘が5位と惜しくもメダルを逃しました。中国勢二人が強いということはわかっていたので、銅メダル濃厚かなと思っていましたが、ロシアの選手も非常に強かったですね。
残念ながら実力差の負けだったと思います。ただ北京五輪も4位で今大会も4位と5位。同じ東アジアの中国が活躍しているのでアーチェリー同様こちらもちゃんと強化を行えば金メダル有望種目になる可能性は秘めていると感じます。
取れるところはしっかり強化してメダルを取っていくという方針を国が打ち出してくれればいいのですが。
なでしこジャパンは4強進出
女子サッカーでは決勝トーナメント初戦でブラジルに勝利しベスト4進出!まずはメダルへの挑戦権を確保できたことは良かった。
そしてグループ三戦目で一部物議を醸していたところでもしベスト8で負けていたらおそらく世間では非難の声が噴出していたでしょう。勝って正しさを証明できたということも将来の日本女子サッカーを考えたらとても大きい。
ただこのサッカーではフランスに勝てないでしょう。大会前からの不調を引きずりつつもなあなあでベスト4まで来てしまったような印象があります。
正確なパス、豊富な運動量、アイデアの共有。これら良い時に日本にあったものをもう一度思い出して本来の強いなでしこジャパンを取り戻して欲しい。そうすれば勝てるはず!
大会前に負けたフランスにリベンジを果たして決勝へ進んで欲しいですね。
室伏は順当に予選突破
陸上では室伏広治が二投目に予選通過ラインの78mを越えて決勝進出。しかし去年の世界陸上は一投目で軽々80mを投げて予選通過しているので、その時よりは調子は良くないのか。
決勝はおそらく80mを越えるでしょう。ただ81m、82mとなると投げられるかどうか。世界ランク一位だったイワンティホンがドーピング違反により欠場。ライバルはパルシュ、コズムス、イコニコフといったところでしょうか。
特にクリスチャンパルシュは今期82mを投げていて予選も一位通過とかなりの強敵。去年の世界陸上も6cm差でした。メダルラインは80m、金メダルラインは82mでしょう。決勝で室伏が82m以上投げてくれることを期待したいと思います。
女子100m予選では残念ながら福島千里が予選落ち。この種目はカルメリタジーター、シェリーアンフレーザープライスの二強が優勝候補か。
ベロニカキャンベルブラウン、バプティステ、カロンスチュアート、アリソンフェリックスあたりもメダル争いに絡んでくると予想します。
男子400mH予選で出場した日本三選手はいずれも敗退。今期世界ランク五位の岸本鷹幸には期待していたのですが、怪我が残念でしたね。
この悔しさをバネに来年の世界陸上ではまず決勝進出、そして3年後の世界陸上、4年後のリオ五輪ではメダルを取れるくらいに成長していってほしい。
また男子砲丸投げではポーランドのマイエフスキが五輪二連覇を達成。女子1万でもティルネシュディババが五輪二連覇を成し遂げました。
競泳では男女メドレーリレーが決勝進出を決めました。またマイケルフェルプスが100mバタフライで優勝。17個目の金メダル、五輪のメダルは21個となりました。本当にとんでもないですねこの人はw。
また競泳の女子200m背泳ぎではアメリカのミッシーフランクリンが世界記録を更新して金メダルを獲得しました。
本日の見所
さて本日の競技の見所です。
競泳は最終日。男女メドレーリレーで日本はメダルを狙います。男子は3位通過、女子は2位通過。どちらも十分メダル圏内。
ここまで当初の8個という目標を上回る9個のメダルを獲得している競泳日本チーム。明日も男女アベックメダルを獲得して良い流れのまま有終の美を飾って欲しい!
バドミントンでは藤井瑞希・垣岩令佳のフジカキペアが決勝を戦います。相手は世界ランク二位の中国ペア。格上ですがフジカキペアは過去に勝ったこともあります。
銀メダル以上は確定しているので自分たちのプレーを思いっきり出し切って欲しい。そうすれば結果は後からついてくるでしょう。
男子サッカーは決勝トーナメント初戦のエジプト戦。おそらくモロッコ戦と同じスタメンで臨むことになるでしょう。
決して侮れない相手ですが、スペインに勝った時の戦い方を明日もできれば勝利は近づくはず。とにかく前からプレスをかけて自由にプレーさせないことが必要か。
日本はグループリーグ三戦目でターンオーバーできたのに対して、エジプトはできていません。純粋な運動量でも日本が走り勝てるはず。男女アベックメダル獲得に向けて正念場です。なんとか勝ちきってベスト4に進んで欲しい!
陸上は女子100m決勝。カルメリタジーター、シェリーアンフレーザープライスらの世界トップレベルの走りに注目です。男子100mも予選が始まります。ウサインボルト、ヨハンブレイク、アサファパウエル、ジャスティンガトリン、タイソンゲイらの走りに注目。
男子20km競歩では鈴木雄介に注目。昨年の世界陸上で入賞しているので、五輪でもしっかり歩いて上位を目指して欲しい。
その他男子1万m決勝や男子走り幅跳び決勝もあります。
卓球は女子団体の準々決勝。しっかり勝ってベスト4へ駒を進めて欲しい。ベスト4からがメダルを賭けた本当の厳しい戦いになります。
ここまで日本勢のメダル獲得数は実に21個。早くも北京の25個に迫ろうかという勢いです。このペースで過去最高であるアテネの37個という個数を越えて欲しい!
本日はバドミントンでのメダル獲得が確定していますが、それ以外にもメドレーリレーなどでメダルを増やしてくれることを期待しましょう!
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