女子柔道 東京五輪振り返りとパリ五輪への展望

女子柔道 東京五輪振り返りとパリ五輪への展望

女子柔道の東京五輪の成績を振り返ります。

 

 

女子48kg級:渡名喜風南 銀メダル
女子52kg級:阿部詩 金メダル
女子57kg級:芳田司 銅メダル
女子63kg級:田代未来 2回戦敗退
女子70kg級:新井千鶴 金メダル
女子78kg級:濱田尚里 金メダル
女子78kg超級:素根輝 金メダル

 

 

金メダル4個、銀メダル1個、銅メダル1個と男子同様に素晴らしい成績を残しました。

 

全7階級6階級でメダル獲得ということで最強メンバーを送り込めた成果が出たと思います。

 

これから3年後のパリ大会を目指していくわけですが、男子同様に次のオリンピックまで3年しかないので世代交代できる時間は短いです。

 

まだ知られていない超新星が躍進してくるというようなシナリオは考えにくく、現時点のメンバーをベースにしつつ、各階級の2番手、3番手の選手が現代表を脅かせるかという代表争いになっていくでしょう。

 

それでは以下、各階級ごとにパリ五輪に向けた展望をご覧ください。

 

 

女子48kg級

 

今回惜しくも銀メダルとなった渡名喜風南は3年後に29歳。

 

渡名喜が決勝で敗れたクラスニキは3年後に28歳なのでパリでもこの二人が争っていくだろうと考えるのが基本線となります。

 

ビロディドはおそらく階級を上げるので、この階級で日本勢の最大のライバルになるのはやはりクラスニキ。

 

そして対クラスニキという視点では2021年世界選手権でクラスニキを2度投げて圧勝した角田夏実も有力候補になってきます。

 

角田は阿部詩を避けて2019年に階級を52kg級から落としてきた選手。

 

東京五輪の選考レースでは渡名喜に及ばず世界選手権に回りましたが、渡名喜がオリンピックの決勝で敗れたクラスニキに世界選手権で角田が勝ったというのは今後のアドバンテージになってくるでしょう。

 

また今後の伸びという点では現在20歳の古賀若菜にも期待。

 

2021年世界選手権では角田と共に出場し、決勝で角田に敗れて銀メダル。

 

しかし準々決勝では東京五輪で銅メダルを獲得したムンフバットに勝利するなど、すでに世界の上位を争う実力があります。

 

パリまで渡名喜、角田、古賀の3人の激しい代表争いが繰り広げられるはずで、誰が出たら一番金メダルの可能性が高いかという視点で代表選考がなされるはずです。

 

 

女子52kg級

 

今回金メダルを獲得した阿部詩は3年後に24歳。

 

さらに実力を伸ばしていることが考えられ、怪我などが無ければ順当に代表を勝ち取り、実力通りなら順当に金メダルを取ることになるでしょう。

 

しかし今回決勝で戦ったブシャールは地元フランスでの五輪となるので怖い相手。

 

そして下から階級を上げてくるビロディドも強敵になりそうです。

 

現状日本のこの階級の2番手は志々目愛。2021年世界選手権を優勝している実力者です。

 

しかし志々目の年齢が現在27歳であることを考えると、やはりこの階級は阿部詩が代表争いの軸になるであろうと思います。

 

 

女子57kg級

 

今回銅メダルを獲得した芳田司は3年後に28歳。まだまだ今から実力を伸ばしてパリを狙える選手です。

 

カナダのクリムカイトや出口クリスタも同世代でパリでもライバルになるはず。

 

しかし最も怖いのは今回銀メダルを獲得し、団体戦でも芳田に勝利したフランスのシジクになるでしょう。

 

シジクは3年後に26歳。選手としての全盛期を地元フランスで迎えることになります。

 

日本国内で芳田のライバルとなるのは玉置桃。2021年世界選手権準決勝で出口クリスタを破った選手です。

 

玉置も3年後に29歳と芳田や出口、クリムカイトとほぼ同世代。

 

芳田との実力差も大きくなく、パリ五輪までは芳田と玉置の代表争いが繰り広げられる可能性が高いです。

 

さらに下の世代に目を向けると、現在22歳の舟久保遥香は今後伸びてきそうな選手。

 

世界ジュニアでは3度の優勝経験があり、シニアでもグランドスラムで表彰台経験があります。

 

舟久保が芳田や玉置を脅かすような存在になってくれば、この階級はさらに楽しみな階級になってきます。

 

 

女子63kg級

 

今回2回戦敗退だった田代未来は3年後に30歳。

 

まだまだパリを狙える年齢ではありますが、オリンピック2大会連続でメダル無しという実績は代表選考の際、厳しく判断される可能性が高いです。

 

過去には阿武教子さんのようにオリンピック2大会連続初戦敗退を乗り越えて3大会目で金メダルを獲得した事例もありますが、田代が阿武さんのようになれるかは今後の活躍次第でしょう。

 

この階級で田代を追うのが鍋倉那美。現在24歳とまだ若く。2019年ワールドマスターズでは東京オリンピックで金メダルを獲得したアグベニューを破っています。

 

この階級はアグベニューの力が頭一つ抜けていて、しかも3年後はアグベニューの地元のフランス。

 

金メダルを狙うためには最低でもアグベニューとの今後3年間における対戦成績を五分五分にしたいところです。

 

田代、鍋倉には引き続きアグベニュー対策を突き詰めていくことが必要で、それを見出した選手がパリ五輪代表に近付くことになるでしょう。

 

 

女子70kg級

 

今回金メダルを獲得した新井千鶴は3年後に30歳。

 

こちらもまだパリを狙える年齢ではありますが、下の世代も伸びてきて欲しい階級になります。

 

日本でのこの階級の2番手は大野陽子ですが、大野陽子は新井より年上。

 

下からの突き上げというところでは3番手の新添左季などに期待したいところです。

 

新添左季は現在25歳でパリの時は28歳。ワールドマスターズやグランドスラムの優勝経験もあり、新添が残り3年で国際大会の成績を残していけば新井の対抗馬になれます。

 

新添と新井が競い合いながら代表争いをするようになれば、日本勢としてこの階級のオリンピック連覇というのも見えてくるでしょう。

 

 

女子78kg級

 

今回金メダルを獲得したM田尚里は3年後に33歳。

 

得意の寝技の技術については年を取っても早々衰えないと思いますが、3年後も濱田に頼り切りというのは現実的ではなく、下の世代からの突き上げを期待したい階級になります。

 

この階級の2番手は梅木真美。3年後は29歳と濱田より若いです。

 

しかしそもそも梅木はリオ五輪の時点では代表を掴みながら初戦敗退し、その後自分より年上の濱田に抜かれて東京五輪の代表を失ったという立場です。

 

一度逆転した力関係をもう一度戻すのはかなりハードルが高いです。

 

梅木よりさらに下の世代には現在24歳でグランドスラム優勝経験のある泉真生や現在22歳で世界ジュニアを連覇している和田梨乃子などがいます。

 

泉や和田などの世代を積極的にワールドツアーに派遣し、経験を積ませていきたい階級になります。

 

 

女子78kg超級

 

今回金メダルを獲得した素根輝は3年後に24歳。

 

阿部詩と同じ世代であり、しばらくは素根に託せる階級になるでしょう。

 

素根は若い選手ではありますが試合運びはベテラン以上に上手く、若さだけの勢いで金メダルまで駆け上ったような選手ではありません。

 

柔道IQも高く、パリやその先のロサンゼルスくらいまでは素根の時代が続いてもおかしくありません。

 

国内で素根を脅かす存在としては2021年世界選手権決勝で戦った朝比奈沙羅と冨田若春というあたりになってきますが、この二人は素根より年上。

 

ここから素根の伸びをさらに上回るというのは相当な困難が伴うでしょう。

 

現時点では素根に連覇を託したい階級だと言えます。

 

 

 

 

 

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