東京五輪から1年。各競技の現在地1 柔道編

東京五輪から1年。各競技の現在地1 柔道編

東京五輪から1年後の現在地ということで東京五輪が閉幕して1年、パリ五輪まであと2年という状況の、各競技の現在地を確認したいと思います。

 

まず第一回目は柔道編です。

 

まずは東京五輪の結果をおさらいしておきましょう。

 

男子60kg級 藤直寿 金メダル
男子66kg級 阿部一二三 金メダル
男子73kg級 大野将平 金メダル
男子81kg級 永瀬貴規 金メダル
男子90kg級 向翔一カ 3回戦敗退
男子100kg級 ウルフ・アロン 金メダル
男子100kg超級 原沢久喜 5位

 

女子48kg級 渡名喜風南 銀メダル
女子52kg級 阿部詩 金メダル
女子57kg級 芳田司 銅メダル
女子63kg級 田代未来 2回戦敗退
女子70kg級 新井千鶴 金メダル
女子78kg級 M田尚里 金メダル
女子78kg超級 素根輝 金メダル

 

以上の結果であり、東京五輪後に引退を表明したのは女子70kg級の荒井千鶴のみです。

 

他のオリンピック代表選手達は五輪後に休養期間に入り2021年は全休となりました。

 

2022年に入り試合に復帰してきたという段階です。

 

そんな中で、各階級の情勢を順番に見ていきましょう。

 

 

 

・男子60kg級

 

永山竜樹は2022GSパリで優勝し高藤直寿を追いかける1番手として地位を固めています。

 

バルセロナ五輪金メダリストの古賀稔彦さんの息子、古賀玄暉もいますがなかなか国際大会で結果を残すことができていません。

 

高藤直寿は4月の選抜体重別で復帰。決勝で古賀玄暉に敗れましたが、実績の差で高藤が世界選手権の代表に選ばれました。

 

古賀は永山、高藤に連勝するも世界選手権の代表には選ばれず。

 

やはり国際大会での実績が乏しく、6月のGSトビリシでも3位でした。

 

高藤が世界選手権でも好成績を残せば、その差はさらに広がりそうです。

 

 

 

・男子66kg級

 

東京五輪金メダリストの阿部一二三は4月の選抜体重別で復帰。

 

長年のライバルである丸山城志郎を決勝で破り、金メダリストとしての強さを示しました。

 

世界選手権の代表には阿部一二三、丸山城志郎と二人が選出され、再び雌雄を決することとなります。

 

阿部一二三、丸山城志郎を追う若手としては2021GSパリを制した田中龍馬がいます。

 

 

 

・男子73kg級

 

東京五輪金メダリストの大野将平は五輪後に一度も大会に出ていません。

 

若手では原田健士や大吉賢が台頭してきました。

 

原田は2021GSパリを制し、大吉もGSバクーで2位。

 

そして大野と東京五輪の代表を争った橋本壮市も原田が早期敗退した2022GSパリで2位と結果を残しています。

 

4月の選抜体重別では橋本壮市が原田を破り優勝。世界選手権の代表に選ばれました。

 

このまま橋本がパリ五輪まで辿り着くのか、大野将平が戻ってくるのか、原田や大吉ら若手がまくるのか。

 

予断を許さない階級となっています。

 

 

 

・男子81kg級

 

永瀬貴規が休んでいる間に佐々木健志が2021GSパリで大爆発しました。

 

マティアス・カッス、グリガラシヴィリという世界最強クラスの相手をわずか1分ほどで仕留め優勝。

 

完全に潜在能力が開花したと思われました。

 

しかし2022GSパリでは佐々木が欠場し、藤原崇太郎が優勝。

 

藤原崇太郎も2018年の世界選手権で銀メダルを獲得しているなど実績のある選手で永瀬が戻ってこないのであれば藤原と佐々木の争いになっていたことでしょう。

 

しかし永瀬も4月の選抜体重別で戻ってきました。

 

そして選抜体重別では藤原が佐々木に勝ち、その藤原に永瀬が勝ちという流れで永瀬が優勝。

 

永瀬も復帰戦ながら金メダリストとしての強さを見せました。

 

世界選手権の代表には永瀬と藤原の二人が選ばれています。

 

 

 

・男子90kg級

 

この階級の五輪代表だった向は五輪後に目立った成績を残せず。

 

2021GSパリで優勝した長澤憲大や2022GSパリで優勝した村尾三四郎がパリ五輪に近い位置に来ています。

 

その二人を追い上げてきているのが増山香補でGSバクーで優勝。

 

4月の選抜体重別でも増山が優勝し、世界選手権の代表に選ばれました。

 

 

 

・男子100kg級

 

東京五輪金メダリストのウルフ・アロンは五輪後に一度も大会に出ていません。

 

現状ウルフと代表を争う選手は飯田健太郎になります。

 

飯田はGSバクーで3位、2022GSパリでも3位。

 

ただ近年国際大会での優勝から遠ざかっており、4月の選抜体重別でも羽賀龍之介に敗れております。

 

世界選手権は飯田にとって正念場。ここで結果を残せないとウルフ待望論が持ち上がるでしょう。

 

 

 

・男子100kg超級

 

東京五輪代表の原沢久喜は五輪後に一度も大会に出ていません。

 

その間に斉藤立が台頭してきました。GSバクーで優勝。

 

この階級での五輪後の主要国際大会優勝は斉藤だけなので順当に世界選手権の代表に選ばれました。

 

 

 

・女子48kg級

 

東京五輪銀メダリストの渡名喜風南が休んでいた間に古賀若菜が台頭。

 

古賀は2021GSパリで優勝。

 

そして東京五輪前に52kg級から48kg級に階級を下げたベテランの角田夏実も2022GSパリで優勝しています。

 

2021年世界選手権決勝では角田が古賀に勝利しており、現状は角田が打倒渡名喜の1番手と言えるか。

 

さらに立川莉奈もGSバクーで優勝しており、現状日本女子で最も層の厚い階級と言えます。

 

そして満を持して渡名喜も4月の選抜体重別で復帰。

 

古賀、角田を立て続けに撃破し、いきなりの優勝。

 

文句無しに世界選手権代表に選出されると共に、準優勝の角田も代表に選ばれました。

 

世界選手権でも渡名喜と角田の優勝争いになる可能性が高そうです。

 

 

 

・女子52kg級

 

東京五輪金メダリストの阿部詩は手術後に本調子じゃないまま4月の選抜体重別で復帰し、1回戦を勝ったところで棄権。

 

選抜体重別に出場するというノルマは果たし、世界選手権の代表に選ばれています。

 

現状阿部詩を追う選手はGSテルアビブで2位の武田亮子や2017年世界選手権金メダリストの志々目愛くらいか。

 

しかし実績、実力共に阿部詩が大きく抜けており、世界選手権でしっかり完調したことを示せればパリ五輪まで阿部詩の時代が続くでしょう。

 

 

 

・女子57kg級

 

東京五輪銅メダルの芳田司が五輪後に休んでいた間に舟久保遥香や玉置桃が着実に実績を残してきました。

 

舟久保遥香は2021GSパリ、2022GSパリで優勝。玉置桃はGSバクーで優勝。

 

芳田は選抜体重別で復帰しましたが、決勝で舟久保が芳田に勝利。

 

舟久保は準決勝でも玉置を破っており、ライバル二人を破って文句無しの世界選手権代表となりました。

 

 

 

・女子63kg級

 

東京五輪代表の田代未来は五輪後に一度も大会に出ていません。

 

鍋倉那美が2022GSパリで優勝しており、現在パリ五輪の代表に一番近いのは鍋倉でしょう。

 

また堀川恵もGSテルアビブで優勝しており、代表争いに絡む一人です。

 

選抜体重別では堀川が鍋倉に勝利し、堀川が世界選手権の代表に選出されました。

 

 

 

・女子70kg級

 

東京五輪金メダリストの荒井千鶴が引退したこの階級は混沌としてきています。

 

新添左季は2021GSパリ優勝、寺田宇多菜はGSバクーで優勝。

 

そして選抜体重別で優勝したのが田中志歩でした。

 

世界選手権の代表には田中と新添が二人選出されています。

 

 

 

・女子78kg級

 

東京五輪金メダリストのM田尚里は選抜体重別で復帰しそのまま優勝。

 

濱田を追う存在としてはリオ五輪の代表でもあり2022GSパリで2位に入った梅木真美がいましたが、選抜体重別では準決勝敗退。

 

濱田が順当に世界選手権の代表に選ばれました。

 

 

 

・女子78kg級

 

東京五輪金メダリストの素根輝は五輪後に手術をしてずっと大会に出ていませんでしたが、2022アジア選手権で復活し優勝。

 

相変わらずの強さを見せています。

 

2022GSパリで優勝した冨田若春が現状で素根を追う1番手でしょう。

 

選抜体重別でも優勝し、世界選手権の代表に選ばれました。

 

 

 

 

 

関連ページ

2022年柔道グランドスラムウランバートル結果まとめ
高藤直寿と東京五輪の代表を争った永山竜樹が優勝。今大会の決勝ではその高藤直寿と東京五輪決勝を戦った台湾のヤンユンウェイに勝利。
2021年柔道グランドスラムバクー 結果まとめ
柔道の国際大会、グランドスラムバクーが行われましたので結果をまとめます。東京五輪、グランドスラムパリの後ということもあり、グランドスラムにしては面子はやや弱め。
2021柔道グランドスラムパリ 女子柔道結果まとめ
今年の世界選手権で準優勝した20歳の古賀が優勝。それも地元フランスのエース、ブクリとクレモンという二人を破っての優勝で、いよいよ本格化してきたなという印象があります。この階級はオリンピック銀メダリストの渡名喜や世界選手権で古賀を破って優勝した角田もおり、今後のパリ五輪に向けての代表争いが俄然楽しみになってきました。
2021柔道グランドスラムパリ 男子柔道結果まとめ
世界柔道では初戦敗退と結果を残せなかった古賀ですが、今大会は5位。準々決勝でアゼルバイジャンのアグハエフ、3位決定戦でモンゴルのアリウンボルドというそれほど目立った強豪でもない相手に敗戦しているのは微妙なところ。
パリ五輪に向けた柔道ワールドツアーとワールドランキングの仕組み
オリンピックや世界選手権で優勝することは凄いことだということはイメージできるかと思いますが、マスターズやグランドスラムやグランプリの優勝がどれくらい凄いのか。どのような序列になっているのか。それを理解していれば次のオリンピックへ向けた柔道界の動きがわかりやすくなるでしょう。
2021年世界柔道ツイートまとめ
古賀!初戦でいきなり負けるなよ!posted at 17:58:00永山はさすがですね。初戦でいきなり難敵のヌリヤエフだったけどしっかり勝った。世界柔道は日本は五輪選手出してないですけど他国は結構五輪メンバーを送っているので日本の2番手と世界の代表との差を測る機会です。順当なら永山はベスト4でキルギスバエフ、決勝でアブラゼと当たりますposted at 18:04:40
2019年世界柔道ツイートまとめ
本日開幕の世界柔道。男子60では永山が2回戦でいきなり強豪のキムウォンジンと当たってしまう。ここを超えたらベスト8でスメトフ、ベスト4はウロズボエフかムシュヴィドバゼだと思われる。かなり難しいブロックに入ってしまったposted at 10:36:37
2019年世界柔道振り返り8
世界柔道東京が閉幕した。今大会の振り返りや今後の東京五輪代表争いの展望などをまとめていきたい。今回は男女混合団体戦を振り返っていく。
2019年世界柔道振り返り7
世界柔道東京が閉幕した。今大会の振り返りや今後の東京五輪代表争いの展望などをまとめていきたい。今回は男子100kg超級、女子78kg超級を振り返っていく。
2019年世界柔道振り返り6
世界柔道東京が閉幕した。今大会の振り返りや今後の東京五輪代表争いの展望などをまとめていきたい。今回は男子100kg級、女子78kg級を振り返っていく。
2019年世界柔道振り返り5
世界柔道東京が閉幕した。今大会の振り返りや今後の東京五輪代表争いの展望などをまとめていきたい。今回は男子90kg級、女子70kg級を振り返っていく。
2019年世界柔道振り返り4
世界柔道東京が閉幕した。今大会の振り返りや今後の東京五輪代表争いの展望などをまとめていきたい。今回は男子81kg級、女子63kg級を振り返っていく。
2019年世界柔道振り返り3
世界柔道東京が閉幕した。今大会の振り返りや今後の東京五輪代表争いの展望などをまとめていきたい。今回は男子73kg級、女子57kg級を振り返っていく。
2019年世界柔道振り返り2
世界柔道東京が閉幕した。今大会の振り返りや今後の東京五輪代表争いの展望などをまとめていきたい。今回は男子66kg級、女子52kg級を振り返っていく。
2019年世界柔道振り返り1
世界柔道東京が閉幕した。今大会の振り返りや今後の東京五輪代表争いの展望などをまとめていきたい。まずは男子60kg級、女子48kg級から振り返っていく。
2019年世界柔道東京見所紹介と予想3
男子100kg級にはウルフアロンが登場。実力は誰しもが認めるが調子に波があり、前回大会もメダル無し。世界ランキングも八位と実績では優勝候補とは言い難い。しかし一番良い時のウルフアロンならば世界の頂点にも手が届くポテンシャルがある。
2019年世界柔道東京見所紹介と予想2
男子73kg級にはリオ五輪王者の大野将平が満を持して登場。代表選考レースでは長らく橋本壮市にリードを許していたが、ここ一年で急激に追い上げて代表の座を掴んだ。明確にリードするためには今大会何としても優勝したいところ。
2019年世界柔道東京見所紹介と予想1
初日の最軽量級。男子60kg級は高藤直寿と永山竜樹が出場する。東京五輪代表争いをリードしているのは高藤。この世界選手権で優勝すればさらに盤石のものになる。永山はここで優勝しなければ厳しい立場になるだろう。
2018年柔道グランドスラム大阪 -東京五輪代表選考レース-
東京五輪の代表選考に大きく関わってくる柔道グランドスラム大阪が終わりましたので、結果を見つつ現在の各階級の状況を見ていきます。
2018年世界柔道 結果雑感
男子60は高藤が頭一つ抜けだした。永山も強いしこの2人は実力的に世界の1位と2位だと思っている。東京五輪代表は高藤が85%、永山が15%くらいか。いずれが出ても東京五輪では金メダルを取りたい階級。女子48はビロディドという17歳の新星が現れた。彼女は谷亮子以来の絶対女王になるかもしれない。
2017年世界柔道ツイートまとめ
世界柔道初日は高藤、渡名喜が金メダル。出だし好調!posted at 01:02:198/29阿部一二三君めちゃめちゃ強いな・・・posted at 21:23:21阿部一二三君は4試合で一本2つに技有り5つ。キレキレposted at 21:58:45
2015年グランドスラム東京ツイートまとめ
柔道グランドスラム東京が終わって来年のリオ五輪代表が誰になるか見えてきたのでまとめようと思います。男子60は高藤が優勝でリオに大きく近付いた。今回3位で世界選手権も銅メダルだった志々目が追うが高藤との差は開いたposted at 23:04:48
2014年世界柔道ツイートまとめ
さて今日から世界柔道開幕ですね。柔道はそれほど詳しくはないのですが、世界の有力選手だったり日本選手の現在の立ち位置であったりはわかってますし、世界ランキングや今年の大会結果と今大会のトーナメント表を照らし合わせればある程度予想はできますので、詳しくないなりに予想してみます。
2014年グランドスラム東京ツイートまとめ
柔道グランドスラム東京では高校二年生の阿部一二三君が世界柔道三連覇中の海老沼に勝っている!末恐ろしい若手が出てきましたposted at 00:26:04女子48は近藤と浅見の日本人決勝対決を近藤が制して優勝。浅見はロンドン五輪以前は無敵の強さでしたけど今は近藤の方がリオ五輪金メダルに近いですね。posted at 00:28:35