バドミントン 東京五輪振り返りとパリ五輪への展望
バドミントンのメダルは混合ダブルスの渡辺、東野ペアの銅メダルのみ。
リオ五輪(金1、銅1)以上、全種目メダル獲得を掲げた日本チームにとしては惨敗という結果と言わざるを得ないでしょう。
関係者の話では「日本チームは試合を経て調子を上げる選手が多いが、コロナ禍で大会が無くなり、調子を上げきれなかった」ということが聞かれました。
コロナ禍がマイナスに働いた競技の一つとも言えます。
今回の記事では各種目ごとに大会の振り返りと今後に向けての展望を書いていこうと思います。
・男子シングルス
世界ランク1位の桃田賢斗は予選リーグ敗退、常山幹太は決勝トーナメント1回戦敗退となりました。
桃田はまさに試合を通して調子を上げていく選手であり、交通事故や自らのコロナ陽性により2021年シーズンに出場した大会は全英オープンのみ。
その全英オープンでも準々決勝で敗れており、東京五輪でも調子を上げきれぬまま予選リーグ2戦目で格下相手に敗れるという展開になってしまいました。
ここで勝てていたら決勝トーナメントはベスト8でグアテマラの世界ランク下位の選手と当たる組み合わせだったため、4強までは進めた可能性が高かったです。
常山は予選リーグを危なげなく2戦ともストレートで勝利。しかし決勝トーナメント初戦で世界ランク5位と格上のギンティンに敗れました。
常山は現在25歳とまだまだ成長はこれから。敗戦後に最もパリへの意欲を見せたのが常山でした。
桃田もまだ26歳。パリ五輪については明言していませんが、このまま終わる桃田ではないと思っています。
二人とも3年後もまだ20代ですから、パリ五輪でもこの二人が上位を目指すという展望になります。
・女子シングルス
世界ランキング3位の奥原、5位の山口と二人でメダルを狙いに行きましたが残念ながら二人ともベスト8で敗退。
奥原の準々決勝の相手は世界ランクも格下で過去8勝2敗と相性の良い中国のホー・ビンジャオでした。
1セット目は危なげなく取りましたが、2セット目と3セット目を立て続けに落として逆転負け。
本来は負ける相手では無かったので調整やメンタル的な部分も含め、敗因を分析し次回に繋げる必要があるかと思います。
山口茜は準々決勝で前回銀メダリストのプサルラに敗戦。
強敵相手でしたが乗り越えることができませんでした。
奥原は現在26歳、山口は現在24歳とまだまだ3年後のパリ五輪を狙える年齢でもあるので、女子シングルスもこの二人が引き続き軸となりパリ五輪を目指すという流れになっていくでしょう。
・男子ダブルス
渡辺勇大、遠藤大由のワタエンペアは世界ランク5位、園田啓悟、嘉村健士のソノカムペアは世界ランク6位と共に上位ランクで臨んだ二組でしたが、どちらもベスト8で敗退。
より悔やまれるのはワタエンペアだったでしょう。事前大会の成績もよく、五輪に入っても予選リーグで強敵のROCやデンマークのペアがいる厳しい組み合わせを3戦全勝で通過。
ここまでの戦いぶりを見る限り、メダルは十分見えていました。
決勝トーナメント初戦で当たった台湾ペアには16-21、19-21で敗れましたが、第2ゲームは18オールまで迫り、ここを取れていればわからなかった。
最終的にこの台湾ペアが金メダルを獲得しているので、ここが事実上の決勝だった可能性もあります。
台湾ペアは準決勝で21-11と21-10、決勝で21-18と21-12で勝っているので、最も金メダルペアを追い詰めたのもワタエンペアでした。
渡辺はこの試合の前に混合ダブルスでも敗れており、渡辺の疲労や混合ダブルスで敗れた精神的ショックもあったかもしれません。
最終結果はベスト8でしたがトーナメントの組み合わせの不運があっただけで、限りなくメダル獲得に近かったペアだったと思います。
ソノカムペアは世界ランク2位のインドネシアのセティアン、ハッサンペアに敗れています。
このペアに関しては相手が格上ということもあり順当な結果とも言えます。
しかし敗れたとはいえ1セットを取る粘りを見せており、あと一歩まで迫った敗戦でした。
パリ五輪に向けては現在24歳の渡辺は混合ダブルスのメダリスト会見にてパリへの意欲を見せましたが、34歳とベテランの遠藤は態度を明らかにしておらず、渡辺は別のペアと組み直すことになるかもしれません。
ソノカムペアも大会前から東京が集大成と語っており、二人とも現在31歳とベテランの域。
よって今大会出場した2組ともにオリンピックでは今大会が最後になる可能性が高く、パリには新たなペアが挑戦するということになるでしょう。
現時点でワタエンペアとソノカムペア以外に世界ランク上位のペアはいないので、これから3年でどのペアが頭角を現すかというのに注目です。
・女子ダブルス
世界ランク1位の福島由紀、廣田彩花のフクヒロペアと世界ランク2位の永原和可那、松本麻佑のナガマツペアを揃えて金メダルが有力視された女子ダブルス。
しかし海外勢に強いフクヒロペアの廣田が本番直前に膝の靱帯を怪我してしまったのが痛かったです。
本来手術が必要な怪我であり、予選リーグを2勝1敗で突破したこと自体が奇跡的。
決勝トーナメント初戦で力尽きてしまいましたが、それでもやれることをやりきった大会だったと思います。
廣田の怪我があったことで金メダルの期待はナガマツペアにかかることになりましたが、本来両ペアに分散されるはずだった金メダルのプレッシャーもナガマツペアだけにかかってしまったか。
決勝トーナメント初戦で過去3勝4敗とランキング的には格下ながら苦手にしてきた韓国ペアに敗戦してしまいます。
マッチポイントを6度握りながらも取り切れないという勝負弱さが出てしまい、逆に3度目のマッチポイントをものにした韓国ペアが勝利しました。
ここで勝てていたらベスト4だったのでメダルは見えていました。
今大会はフクヒロペアに予選リーグで勝利したインドネシアペアが金メダル、フクヒロペアに決勝トーナメントで勝利した中国ペアが銀メダル、ナガマツペアに決勝トーナメントで勝利した韓国ペアが銅メダルという結果でした。
メダルを取ったペアは全て日本のいずれかのペアに勝利しており、フクヒロペアが本調子だったら、ナガマツペアがマッチポイントを取れていたら、ということが非常に悔やまれます。
3年後のパリに向けてですが、廣田の手術が成功したということでフクヒロペアはまずは廣田の回復を待ってから再始動ということになるでしょう。
ナガマツペアは永原が現在25歳、松本が現在26歳と3年後もまだ20代なのでパリ五輪で十分リベンジを狙える年齢です。
またこの2ペアに続くペアとして現在世界ランク10位にさらに若い松山奈未、志田千陽のペアもいます。
今大会では結果が出ませんでしたが、3年後も引き続き金メダルを狙っていきたい種目になります。
・混合ダブルス
今大会日本チーム唯一となる銅メダルを獲得した渡辺勇大、東野有紗のワタガシペア。
この種目史上初のメダル、今大会日本勢バドミントン唯一の銅メダルではありましたが、金メダルに届きかけた銅メダルだったと思います。
予選リーグは危なげなく3試合全てでストレート勝ち。特に3戦目は世界ランク4位と格上のインドネシアペア相手に21-13、21-10と危なげなく勝利。
予選リーグ終了時点では男子ダブルスのワタエンペアと、このワタガシペアが最も金メダルに近いように見えました。
準々決勝でも世界ランク2位のタイのペア相手にフルセットをものにして勝利。
準決勝では世界ランク3位の中国ペアに接戦の末敗れましたが、最終的にはこの中国ペアが金メダルを獲得。
決勝トーナメントで敗れた相手が最終的に優勝したのはこの混合ダブルスと男子ダブルスのワタエンペアのみ。
混合ダブルスと男子ダブルスのワタエンペアは本当に金メダルと紙一重だったと思います。
混合ダブルスの3位決定戦は渡辺にとって前日に混合ダブルス準決勝と男子ダブルス準々決勝で二敗しており、一日では気持ちを立て直すのが難しかったと思います。
しかし渡辺が「僕の心が折れそうになっても先輩が声をかけてくれて踏ん張らせてくれた」と振り返ったように苦しい場面で東野が引っ張り、見事接戦を制して銅メダルを獲得しました。
パリへ向けてという点ではメダル獲得後の記者会見で渡辺、東野ともにパリでの金メダルを目標と口にしており、さらに良い色のメダルを目指してくれることでしょう。
もう一つ楽しみなペアとしては金子祐樹、松友美佐紀のペアもいます。
リオ五輪で金メダルを獲得したタカマツペアが東京五輪出場権を逃し、2020年に高橋礼華が引退を発表。
タカマツペアが解消されたことで、松友は金子祐樹との混合ダブルスに専念することとなりました。
その後、高橋礼華は金子祐樹との結婚を発表。松友にとっては元々ダブルスを組んでいた高橋の夫である金子と組むということになったのです。
まだペアを組んで日が浅いので世界ランクは低いですが2020年全日本選手権、2021年全英オープンといずれもワタガシペアに敗れての準優勝。
さらなる進化を期待できるペアであり、パリ五輪では混合ダブルスに2組代表を送り込んで2組で金メダルを狙いに行くというのも十分考えるでしょう。
混合ダブルスも3年後に期待したい種目になります。
バドミントンは9/26から男女混合の国別対抗戦であるスディルマンカップがあります。
10月には国別対抗戦のトマス杯、ユーバー杯。11月には世界選手権。
そして来年2022年には日本開催で世界選手権が行われます。
渡辺、東野ペアが多くのバラエティ番組に出演していることもあり、現在多くの注目が集まっているバドミントン。
これらの大会もしっかり注目して頂ければ、パリ五輪がさらに楽しくなるのではないかと思います。
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