2019年世界柔道振り返り8

2019年世界柔道振り返り8

世界柔道東京が閉幕した。

 

今大会の振り返りや今後の東京五輪代表争いの展望などをまとめていきたい。

 

今回は男女混合団体戦を振り返っていく。

 

 

危なげなく決勝進出

 

三連覇を目指す日本は2回戦の韓国戦。

 

個人戦メンバーを温存し、団体戦メンバーとして選ばれた村尾三四郎、影浦心、玉置桃に加え、本来出場予定だった78kg超級の素根や朝比奈ではなく78kg級の濱田が出場。

 

ベストメンバーではないものの危なげなく4連勝して準決勝に進出。

 

 

そして準決勝のブラジル戦でチームに勢いをつけたのは濱田。

 

初戦で自分より20kg以上重い上の階級の強豪、アルテマンと対戦。

 

素根や朝比奈のコンディション不良で急遽当日朝に出場が決まったという濱田だが得意の寝技で延長の末に押さえ込んで一本勝ち。

 

この勢いのまま初戦に引き続き4連勝で決勝進出を決めた。

 

 

強豪フランスとの頂上対決

 

決勝は強豪フランス。日本の最大のライバルになるだろうと思われていた相手が順当に決勝に上がってきた。

 

決勝のオーダーは以下の通り。

 

 

男子90kg超級:影浦心 − MARET Cyrille

 

女子57kg級:芳田司 − SARA Leoni Sijik

 

男子73kg級:大野将平 − CHAINE Guillaume

 

女子70kg級:新井千鶴 − GAHIE MARIE EVE

 

男子90kg級:村尾三四郎 − CLERGET Axel

 

女子70kg超級:M田尚里 ー MALONGA MADELEINE

 

 

このオーダーの両国の力関係を見たところ、日本としては芳田、大野、新井で3勝は確実に取りたいというオーダー。

 

つまりこの3勝に加え、影浦か村尾のどちらかが1勝を取る。

 

逆に大将戦の濱田は個人戦でマロンガに負けているため、大将戦にはもつれ込ませたくないという目論見だったはず。

 

 

そんな中、初戦で影浦がシリルマレ相手に勝利。これで日本の4連勝もあり得るかと思った。

 

しかし2戦目。前世界王者であり今大会も銀メダルを獲得した芳田がシジク相手に開始直後の隙を突かれてまさかの敗戦。

 

これで日本の目論見は崩れることになる。

 

 

そんな中フランスに行きかけた流れを断ち切ってくれたのがエースの大野将平。

 

圧巻の合わせ技1本であっという間に決着をつけ2勝1敗とリードする。

 

 

そして4戦目の前世界王者、新井千鶴も今大会3回戦負けの悔しさを払拭するように、今大会優勝したイヴガイ相手に執念の一本勝ち。

 

個人戦で負けた数日後に金メダリストを倒し、この階級の第一人者は自分であるという意地を見せつけた。

 

 

あと1勝とし5戦目は村尾三四郎対クレルジュ。大将戦にもつれ込ませる前に終わらせたい日本の目論見からするとここで勝負を決めたかったが、延長戦の末に敗戦。

 

 

ここで日本の3勝2敗で大将戦の濱田対マロンガ。

 

濱田は二日前の個人戦決勝でマロンガ相手に敗れている。

 

しかし今日の濱田は一味違う。

 

個人戦の時は自分の土俵に持ち込むことができず敗れたが、この日の団体ではワンチャンスの寝技で仕留め切った。

 

階級が上の強豪、アルテマンをも寝技で仕留めることができるのであれば濱田にとってこの階級で寝技で勝てない相手はいない。

 

急遽出場ということになった濱田だがアルテマン、マロンガにきっちり勝ち切ったことは大きく、まさに今日のMVPと言えるだろう。

 

そして来年の東京五輪でも間違いなく最大のライバルになるであろうマロンガに個人戦のリベンジを果たせたことは大きな自信になったことだろう。

 

私はこの日の濱田を見て、来年の東京五輪女子78級の本命は濱田になったと感じた。それくらい強いインパクトを残した一日だった。

 

 

来年の五輪に向けた団体戦の展望

 

来年の五輪もフランスが最大のライバルになるだろう。今回は辛くも勝てたが来年はそう簡単にはいかないだろう。

 

まず五輪では団体戦用メンバーを登録することができないため、全て個人戦出場メンバーで戦う必要がある。

 

そしてもし個人戦で怪我などしてしまったら、階級が下の選手が出場するしかない。

 

つまり来年の日本のメンバーは以下のようなメンバーになるだろう。

 

 

男子73kg級:大野将平(控え:丸山城志郎or阿部一二三)
女子57kg級:芳田司(控え:阿部詩)
男子90kg級:向翔一郎(控え:藤原崇太郎or永瀬貴規)
女子70kg級:新井千鶴(控え:田代未来)
男子90kg超級:原沢久喜(控え:ウルフアロン)
女子70kg超級:素根輝(控え:M田尚里)

 

 

個人戦を終えた後、全員が万全の状況で出場できるとは限らないので、今大会以上に厳しい戦いになるだろう。

 

そしてなんといってもフランスには絶対王者のリネールがいる。今大会は出場しなかったが東京五輪には間違いなく出てくるだろう。はっきり言って1敗はここで覚悟しなければいけない。

 

今大会の決勝では影浦が星を取ることができたが、来年はここで星を落とす想定をしなければいけない。

 

 

逆に日本が取るべき4勝は大野、芳田、新井、素根という目論見になるはず。

 

大野、素根はコンディションが万全ならまず大丈夫だろうが、新井の相手は今大会でも接戦だったイヴガイ。そして芳田の相手は今回不覚を取ったシジク。簡単な戦いにはならないだろう。

 

日本は今大会で三連覇することができたが、フランスは同格の相手と認識し、あと一年でライバルとの差をつけるよう成長を期待したい。

 

 

 

 

 

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